預金から投資へのシフトを目指して、1月にスタートした「NISA(少額投資非課税制度)」。菅義偉官房長官は7月24日の記者会見で、対象者の拡充や限度額の引き上げなどの促進策を検討していることを明らかにした。対象者拡充の中には、「子ども版NISA」の導入も含まれていることも示唆している。
NISAは、年間の元本が100万円以下であれば、株式の配当や売却益が非課税になる制度だ。「子ども版」については、大人が自分の子や孫の 名義で投資をすることができ、「子や孫のために資産を残したい」と考える親世代、祖父母世代の投資を促すことを目的にしている。
その制度案について、7月13日の日本経済新聞が報じている。同紙の報道によると、子ども版の投資限度額は現行の大人版と同じ100万円で、利用対象年齢は0〜18歳未満とする案が有力のようだ。これに合わせて、大人版の利用対象年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる。さらに18歳になるまでは原則として、非課税では引き出せないように調整しているという。
もし、「子ども版NISA」が実現した場合、具体的にどんなメリットがあるのだろうか。また、どんな点に注意すればよいだろうか。山本憲宏税理士に聞いた。
●贈与の手段としてメリットがある
「NISAは配当や売却益が非課税になる制度ですが、『子ども版NISA』の場合、贈与税について考えることも重要になります。
親や祖父母から、子や孫に贈与することを考えている場合、うまく制度を使えば、贈与税の点からもお得になります」
どうすれば、お得になるのだろうか。
「贈与税には非課税枠があって、その限度額は年間110万円です。つまり、年間100万円まで投資できる子ども版NISAを使うのであれば、この非課税枠の中で子どもや孫名義での積み立てができるのです。
ただし、現行制度では、子ども版NISAの投資額に加えて別の贈与をした場合、その合計が110万円を超えると贈与税がかかってくると思われます」
この「合計110万円」というのが、1つの注目点になりそうだ。
「また、子ども版NISAにおいては、18歳までは原則として引き出せないような方向で制度設計される予定です。災害や両親の不慮の事故による生活の困窮などの場合は、例外として引き出せますが、それ以外の場合は引き出せないため、ちょっと不便かもしれません」
となると、子や孫の中学・高校の学費などには使いづらくなる。子や孫の幼児期から投資したものの、18歳まで引き出せないとなると、ちょっと不便かもしれない。
「NISA自体は今年の1月から導入された制度です。日本のNISAのモデルとなっている英国ISAも、導入当初は非課税期間が期間限定でしたが、恒久化するなど、さまざまな面で制度変更されています。また、子ども版NISAについては、日本のモデルである英国の子ども版ISAも、2011年11月にスタートした歴史の浅い制度です。
現行の大人版NISA自体、非課税期間や非課税枠についても今後、変更になることも考えられます。ですから、子ども版NISAとともに、NISA自体の制度変更についても注意を払っておくことが必要になると思います」
現行の「大人版」も変更可能性が高いということなので、そちらの制度変更にも注意しておく必要がありそうだ。
【取材協力税理士】
山本 憲宏(やまもと・けんこう)税理士
公認会計士・税理士。大手監査法人、中堅監査法人を経て独立。上場企業の監査や上場準備支援業務から再生支援まで幅広い業務を扱った経験を活かし、中小企業をサポートしている。
事務所名 : 山本公認会計士事務所
事務所URL: http://www.yamamoto-cpa.jp/