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秋葉原で話題の「レンタルニート」 人間を「貸し借り」するのは法律的にOKなのか?
昨今の不況や就職難によって、定職に就かずニートとなる若者が後を絶たない

秋葉原で話題の「レンタルニート」 人間を「貸し借り」するのは法律的にOKなのか?

彼女や彼氏だけでなく、ついに「ニート」までがレンタルされるようになったのか――。東京・秋葉原駅前の路上で、「レンタルニート」「ニートが一緒に遊びます」という看板を持つ男性の姿が、ネット上で話題になっている。料金は1時間1000円で、ポケモンやカードゲーム、プラモデル、ベーゴマなどで一緒に遊ぶことができるという。

男性のツイッターやブログによると、彼は25歳で社員全員がニートのNEET株式会社に所属。今回の企画は「有り余る時間でお客と遊ぶサービス」を事業案として考えた一つだという。「(レンタルニートとして)初のお仕事は就活に関するお喋りでした。まともに就活はしたことないです」と報告している。

最近では、レンタル彼女など「レンタル」をうたうサービスが増えているが、今回のレンタルニートは、法的にどう位置づけることができるのだろうか。利用者は「人間」を借りていることになるのだろうか。村上英樹弁護士に聞いた。

●人間を「貸し出す」わけではない

「今回のサービスが『どんな契約なのか』を説明しましょう。

『レンタル』という文字からは、レンタカーのような『賃貸借契約』を思い浮かべるのが普通です。この賃貸借契約は、有償で『物』を貸し借りする契約のことをいいます。

ところが、人間は『物』ではありませんので、賃貸借契約や取引の対象にはなりません。もし人身売買などをすれば、公序良俗違反(民法90条違反)になってしまいます。

ですので、『レンタルニート』というビジネスモデルは、『ニート』という人間を貸し借りする契約と考えることはできません」

それでは、どんな契約なのだろうか?

「『一緒に遊ぶ』というサービスを提供する契約と考えられます。一種の接客業ですね。

気になるのは、客が『レンタル』という言葉の通り、物の賃貸借のような感覚にならないかという点です」

村上弁護士が気にしているのは、具体的にはどういう事態なのだろうか?

「客が、その『サービスを行う人自身(ニート)』を借りたような感覚になり、何をしても良いかのような気になって、社会常識に反した無茶な要求をすることもあるのではないか、という点です。

これは、『レンタル彼女』などの場合にも共通する危険です」

万が一、そんな風に受け止められたら大変だ。

「先ほど述べたとおり、『レンタル』と名が付いても、決して人を貸し借りしているのではありません。相手に要求できるのは、契約に定められたサービスだけです。

もし『レンタルニート』のようなサービスを事業として行うなら、事業者は派遣される人(レンタルニートにあたる人)の労働条件や環境が、その人の人格を脅かすようなものにならないよう、配慮する必要があると思います」

村上弁護士はこのように述べ、利用者やサービス提供者に注意を促していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

村上 英樹
村上 英樹(むらかみ ひでき)弁護士 弁護士法人神戸シティ法律事務所
主に民事事件、家事事件(相続、離婚など)、倒産事件を取り扱い、最近では、交通事故、企業顧問業務、不動産問題、労働災害、投資被害、医療過誤事件を取り扱うことが多い。法律問題そのものだけでなく、世の中で起こることそのほかの思いをブログで発信している。

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