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自転車に乗るときは「ヘルメット」を着用すべし! そんな条例を弁護士はどう見る?
自転車でヘルメットを着用する人は、まだまだ少ないのが現状だ

自転車に乗るときは「ヘルメット」を着用すべし! そんな条例を弁護士はどう見る?

世界的な自転車部品メーカー「シマノ」のおひざ元でもある大阪府堺市で、自転車の利用者にヘルメットの着用を促す条例案が、5月下旬から開かれる市議会に提出される見込みだという。条例案に罰則はないが、「努力義務」として大人、子どもに関わらずヘルメット着用が定められている。

こうした自転車のヘルメット着用の流れは徐々に進みつつあるようだ。2008年施行の改正道交法では、13歳未満の児童を自転車に乗せるときはヘルメットを着用させるように努力義務が定められた。また自治体レベルでは、東京都のほか、人気サイクリングロード「しまなみ海道」を有する愛媛県で、今回の堺市の条例案と同様の条例が施行されている。

ヘルメット着用は自分の身を守るために重要であることは確かだろう。一方で、条例化については反対意見も根強い。ネット上でも、「近所のコンビニにママチャリで出かけるようなときには必要ない」といった意見や、「自転車に乗る人が減ってしまうのでは?」と心配する声もある。

今回のような条例案、弁護士はどう見るだろうか。堺市で開業し、交通事故被害者の損害賠償問題も手がける泉田健司弁護士に聞いた。

●ヘルメットをかぶっていれば避けられた障害も

「私は、自転車事故の損害賠償事件もそれなりに手がけていますが、ヘルメットをかぶってさえいれば、というケースがたしかにあります」

それはどんな事例だろうか。

「死亡事故がもっとも悲惨です。また、『高次脳機能障害』という後遺症が残った場合についても、つらい結果になります。聞きなれないかもしれませんが、高次脳機能障害とは、頭部外傷の結果、脳の機能に障害が残る後遺症です。精神も含め、人体のあらゆる部分に影響を及ぼします。そういった現実を見ている立場からいえば、ヘルメット着用を努力義務とする条例には、賛成です」

ただ、自分でヘルメットを買ったり、「ちょっとそこまで」という距離でもヘルメットをかぶらないといけないのは面倒だ、という声も聞こえてきそうだが・・・。

「その気持ちはわかります。ただ、この条例は、あくまで『努力義務』ですので、違反しても罰金をとられることもなければ、自動車の運転免許の点数を引かれるということもありません」

●ノーヘルメットで事故に遭っても、法的な扱いはこれまで通り

努力義務なら、ヘルメットをかぶらない人もいるだろう。では、堺市で自転車に乗っていて交通事故に遭った場合、ヘルメットの有無で損害賠償の金額に差はでるのだろうか。

「ノーヘルメットで交通事故に遭い、頭部外傷を負った場合を考えてみましょう。ノーヘルメットを理由に、過失相殺されてしまうのではないか。これは気になる点ですね。

たしかに、バイクの場合は、ノーヘルメットだと相当程度、過失相殺されて、受け取る賠償額は減額されます。しかし、私の見解としては、努力義務が規定されても、現状として、大人が自転車でノーヘルメットなのは、一般的です。社会通念に照らして、過失とまではいえないと思います」

なるほど、現状では、大きな違いはないと言えるのだろうか。

「ええ。条例は、あくまで、堺市民に注意喚起して安全意識を高めるという点に主眼があります。直ちに法的に影響があるとは考えにくいでしょう。とはいえ、私も地元愛ということで堺市産の自転車ブランド『堺の自転車』を愛用しています。そして社会の範として、まずは、ヘルメットを購入しようと考えています」

堺市以外の住民も、「ヘルメットは面倒」で終わらせるのではなく、安全への意識を持っておいたほうがよさそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

泉田 健司
泉田 健司(いずた けんじ)弁護士 泉田法律事務所
大阪弁護士会所属。大阪府堺市で事務所を構える。交通事故、離婚、相続等を中心に地域一番の正統派事務所を目指す。

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