「ハンバーガー15個を一度に食べろ」と、職場の先輩に命令された。そんな理不尽な「しごき」が、こともあろうに警察内で繰り返し行われていたと話題になっている。
報道によると、嫌がる後輩にむりやり大食いをさせていたのは、大阪府警の40代の巡査部長。別の交番に勤務する後輩の警察官4人に大量の食料を自腹で買わせ、食べさせていたのだという。1回につきハンバーガー15個やドーナツ15個など、通常の食事とは考えにくい量だったようだ。
後輩警官の1人は2010年6月~12月の半年間で、体重が73キロから88キロにまで増えてしまったという。巡査部長は「仕事に手を抜いたので鍛えるつもりでやった」と話していたようだが、こんなに食べさせられては、鍛えるどころか胃腸を壊してしまいかねない。
ここまでの「大食い」を無理強いすることは、何らかの犯罪なのではないだろうか。この巡査部長は昨年12月に訓戒処分を受け、依願退職したそうだが……。岩井羊一弁護士に話を聞いた。
●強要罪ならば「3年以下の懲役」
「大食いを強いる行為は、強要罪に当たる可能性があります」
岩井弁護士のいう「強要罪」とは、どんな内容の犯罪なのだろうか?
「強要罪は、『生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、または暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害した者』を罰する罪です。
今回の件では、どんな無理強いがなされていたのか、詳しくは伝えられていないため、確定的なことは言えません。
ただ、たとえば上官という立場を利用して、仕事や出世への悪影響をちらつかせたうえで、大量の食料を買わせ、食べさせていたとすれば、『名誉や財産に対する脅迫をして、義務のないことを行わせた』として、強要罪に当たると言えそうです」
強要罪は、どれほど重い犯罪だと考えればいいのだろうか?
「もし強要罪で有罪となれば、3年以下の懲役刑が科されることになりますが、本人が反省・謝罪していれば、いきなり刑務所に行くようなことにはならないでしょう。
しかしながら、こんな風に部下の人格を踏みにじり、自由を奪うことは、許されない行為です。いわゆるパワーハラスメントと言ってよいでしょうし、民事上の責任も問題になり得ます。
この巡査部長は、訓戒処分を受けたようですが、もし大食いの強要が事実であったとすれば、そのような処分を受けるのも当然でしょう」
岩井弁護士はこのように述べていた。それにしても、かわいそうなのは大食いを強要された後輩たちだ。彼らが健康を害さなかったことを切に祈りたい。