芦田愛菜ちゃん、鈴木福くんらの大ブレイクによって、近年さらに、その存在感が増している「子役」という仕事。トップ子役として君臨する彼ら、彼女らの年収はウン千万円とも、ウン億円とも言われており、そうした面からの注目度も高い。「わが子が子役としてブレイクし、稼いでくれたら・・・」という、淡い妄想を描く親御さんも増えていることだろう。
だがそもそも、子役のギャラは働いた子供本人のものではなく、親のものになるのだろうか?また子役として親の収入をも超えるほどのギャラがある場合、扶養家族としての位置付けはどうなるのだろうか?(まさか親が子どもの扶養家族になる可能性も!?)まずは子役のギャラは法律上誰のものになるのか、児童労働の問題に詳しい好川久治弁護士に話を聞いた。
●ギャラは子ども本人のもの 親が子どもの扶養に入ることも
「子役と芸能プロダクションとの契約が労働契約であることを前提とすると、子役は、自ら芸能プロダクションと労働契約を締結し、子役としての労務を提供する主体となります。ですから、賃金(ギャラ)も、子ども自身のものになります。」
「労働基準法では、親は、たとえ親権者であっても、子どもに代わって使用者と労働契約を締結することはできないとされ(法58条1項)、賃金も、子どもに代わって取得することはできないとされています(法59条)。親は、あくまでも親権者として子どもが稼いだギャラ(賃金)を、子どものために管理する権限を有するだけです(民法824条)。」
「子どもが稼いだギャラを、親が財産管理の権限を濫用、ないしは逸脱して自ら費消したり、子どもにとって不利益に処分したりすると、財産管理権を失ったり、子どもから損害賠償請求を受けたりすることもありますので注意が必要です。」
「子どもが多額のギャラを取得すれば、税金や社会保険との関係でも、子どもは親の扶養から外れることになりますし、親が被扶養者の要件を満たせば、子どもの扶養に入ることもあります。」
親が子どもの扶養に入る可能性があるとは驚きだが、ひとたび子役としてブレイクすればそれほどの収入を得ることができるのは事実だろう。
しかし、もし仮に子どもが子役として働きながら親を扶養する関係にあったとしても、義務教育が免除されるわけではない。ここ最近は、ドラマやCM、情報番組、ニュースなど、テレビで人気子役たちを見ない日はないほどで、テレビの前で「ちゃんと学校には行けているのだろうか」と勝手な親心を抱く人も少なくないだろう。それでは子役という仕事には、労働時間に制約はないのだろうか。続けて、好川弁護士に解説してもらった。
●労働時間は週40時間まで 学業との両立のため、夜8時から翌5時までは働いてはいけない
「労働基準法では、義務教育が終わるまでの児童(15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの子)を労働者として使用してはならないと定めています(法56条1項)。一方、労働基準監督署長の許可を得た場合には、一定の軽易な業務については満13歳以上の児童について就労が認められ、さらに『映画の製作や演劇の事業』については満13歳に満たない児童についても労働者として使用できることになっています(法56条2項)。子役は、この『映画の製作や演劇の事業』に従事するものとして就労が認められているわけです。」
「しかし、学業との両立や子どもの健全な育成という観点から、児童の労働時間は、就学時間(学校の授業時間)を通算して1日あたり7時間、1週間あたり40時間を超えてはならないとされ(法60条)、また、午後8時から翌朝5時まで(法61条5項・舞台演劇子役については例外的に午後9時から翌朝6時まで)の就労や、残業や休日労働が禁止されています。」
「ただ、現実には学業との両立が困難であったり、幼いころから世間の注目の的となり、子どものプライバシーや自由意思が守られないという問題を抱え、課題も多いようです。」
子役は法的にも、プロとしてりっぱに認められた労働であり、個人への対価としてギャラが支払われている。ただ、そうはいっても子どもは子ども。一番の頼りは親だ。子役に限らず、子どものやりたいことを尊重しつつ、いましか経験できない貴重な日々をどう共に過ごすか。そこで「親力」が試されているのかも知れない。