3年前に滋賀県大津市でおきた中学生のいじめ自殺事件をきっかけに、学校でのいじめや体罰が再び、大きな社会問題となっている。
いじめや体罰が発覚しても、学校や教育委員会の対応が鈍いケースが多いなか、この問題に詳しい弁護士が被害者や遺族の相談を受け付けるネットワーク「学校事件・事故被害者全国弁護団」が昨年11月に発足した。
弁護団を発足させた狙いは、どういったところにあるのだろうか。また、今後、どのような形で被害者や遺族を支援していくのだろうか。同弁護団の杉浦ひとみ弁護士に話を聞いた。
●「学校の問題に精通した弁護士に早くたどり着いてほしい」
「いじめなど、学校での問題に起因する子どもの事件・事故が多発していますが、そうした事件・事故については、必ずしも適切な解決が図られているとはいえません。
学校が物理的にも組織的にも閉ざされた場所であり、また、子どもや保護者の立場、教員の立場などが、問題解明に難しい要素を与えているからです」
杉浦弁護士は学校現場の持つ閉鎖性をこう指摘したうえで、同弁護団を発足させた狙いを次のように説明した。
「このような状況のもとでは、親が学校との交渉で問題解決をしようとしても、多くの場合、らちがあかずに疲弊してしまいます。
そこで、事情に精通した弁護士に早くたどり着いていただきたいと考え、学校事件等に精通した弁護士を各地方で募り、窓口を公開することにしました」
いじめが起きた際には、速やかに学校内での事件・事故に詳しい弁護士に相談し、よりスムーズな問題解決を図ってほしい、というのがポイントのようだ。
●全国どこでも適切な対応ができるように
弁護団を作った狙いは、他にもあるようだ。
「個々の弁護士が持っている知識・経験・技能をお互いに学び合うことで、全国どこの弁護士でも適切な対応ができるように、相互に経験の交流や学習を行うことも大きな目的にしています。
また、研究者や専門職とも連携を図り、意見交換を行いながら研鑽を深めるとともに、当事者として事件に関わった方や悩みを抱かれた方たちの意見や思いにも傾聴していきたいと思っています」
「全国弁護団」という名前には、そういった思いが込められているようだ。法律という観点で教育現場に切り込むことで、どこまでいじめを解決することができるのか。今後の取り組みに期待したい。