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ドコモ「dカーシェア」悪用、他人の高級外車を「無断売却」…どんな罪?
画像はイメージです(Blue flash/PIXTA)

ドコモ「dカーシェア」悪用、他人の高級外車を「無断売却」…どんな罪?

個人間で車を貸し借りする「カーシェアリング」が悪用される事件が起きた。

産経新聞によると、NTTドコモが運営するアプリ「dカーシェア」で借りた高級外国車を売り払って、代金をだまし取ったとして、住居不定・無職の男性が10月中旬、詐欺などの疑いで、大阪府警に逮捕された。

男性はことし7月、高級外国車を借りたあと、偽造した運転免許証を示して、堺市内の中古買取り業者で売却し、現金約300万円をだまし取った疑いがもたれている。

共同通信が、個人間カーシェアで貸し出された外国車が、無断で売却されるトラブルが、大阪市内で相次いでいると報じていた。

産経新聞によると、男性は「dカーシェア」を通じて、別の20代男性からも車をだまし取ったとして、逮捕されていたということだ。ほかにも同じような手口による被害があるとみられる。

すこし複雑な事件のように思えるが、どのように考えればいいのだろうか。刑事事件にくわしい坂野真一弁護士に聞いた。

●dカーシェアは「共同使用契約」にもとづいている

「まず、dカーシェアは、自動車を使いたい人が、自動車の持ち主と『共同使用契約』という契約を結んで、『共同使用』という形態で自動車を使う、というものです。

一見、自動車をレンタルしているような錯覚を覚えますが、道路運送法80条に次のような定めがあるため、この規制にかからないように、共同使用という形態をとっていると思われます。

『自家用自動車は、国土交通大臣の許可を受けなければ、業として有償で貸し渡してはならない。ただし、その借受人が当該自家用自動車の使用者である場合は、この限りでない』

この共同使用契約で許されているのは、あくまで、その自動車を使用することですから、共同使用契約にもとづいて、個人から引き渡されて使用している自動車を、持ち主に無断で売却することは許されません」

●「当初からだまし取るつもりがあった可能性が高い」

「以上を前提に考えれば、持ち主との間では、次のように考えることができます。

(1)持ち主から共同使用のために引き渡された自動車を、自分の所有物のように処分したのだから、『自己が占有する他人の財産を横領した』と考えて、横領罪(刑法252条1項)と捉える考え方

(2)そもそも売却するつもりであったのに、『共同使用の限度で使用し、使用後は返却する』という約束をすることによって、持ち主をだまして車を受け取ったのだから、『他人を欺いて自動車をだまし取った』と考えて、詐欺罪と捉える考え方(同236条1項)」

「(1)と(2)の違いは、簡単に言えば、次のような点にあります。

(1)は、自動車を受け取った当初は、約束通りに持ち主に返すつもりだったが、使っているうちに売却する気になって売った

(2)は、当初からだまし取るつもりで、『共同使用の限度で使用し後に返却する』という嘘の約束をして自動車をだまし取った

今回のケースは、車を借りる際に、偽造運転免許証を提示した可能性があると報じられています。そのため、当初より持ち主から車をだまし取るつもりがあった可能性が高いと考えられます。

仮に、そのような場合であったとすれば、持ち主との間では、(2)の詐欺罪に該当すると考えるのが素直でしょう」

●有印公文書偽造・同行使にあたる可能性も

「さらに、運転免許証については、行使の目的で偽造して行使すれば、有印公文書偽造罪・同行使罪(同155条・158条)も成立する可能性があるでしょう。

運転免許証本来の用途でなくても、偽造した免許証を真正な文書として用いる目的があれば、行使の目的はあり、といえるからです」

●中古業者に売り払う行為

「また、中古業者との間では、次のように考えることができます。

(3)他人から借りた車なのに、自分の所有物とみせかけて売却すると持ちかけ、他人(中古業者)をだまして、代金を受け取ったのだから、『他人(中古業者)を欺いて金銭をだまし取った』として、詐欺罪(同246条1項)にあたると考えるのが自然でしょう。

また、偽造運転免許証を提示して売却したのであれば、先ほど述べた通り、有印公文書偽造罪・同行使罪(同155条・158条)が成立する可能性もあります」

プロフィール

坂野 真一
坂野 真一(さかの しんいち)弁護士 ウィン綜合法律事務所
ウィン綜合法律事務所 代表弁護士。京都大学法学部卒。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」(いずれも中央経済社)、「増補改訂版 先生大変です!!:お医者さんの法律問題処方箋」(耕文社)、「弁護士13人が伝えたいこと~32例の失敗と成功」(日本加除出版)等。近時は相続案件、火災保険金未払事件にも注力。

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