雪国はいよいよ冬本番を迎える。あたり一面真っ白に覆われた雪景色は眺める分には美しいが、雪かきや雪下ろしは、豪雪地帯に暮らす人々にとって悩みの種だ。降り積もり、シャーベット状になった屋根雪は氷の固まりのようなもので、落ちたところに居合わせたら命の危険すらある。
屋根雪をめぐり、Q&Aサイトにこんな相談があった。相談者の実家は豪雪地帯の福井県。実家の屋根から落下した雪が隣家の屋根を壊してしまい、損害賠償を求められているのだという。
このように持ち家の屋根から雪が落ちて、物が壊れたり、通行人にケガをさせてしまった場合、家主はどのような責任を負うのだろうか。あらかじめ屋根に雪止めの工事をするなど、落雪防止措置を取っていた場合はどうだろう。雪国・北海道で開業する難波徹基弁護士に聞いた。
●落雪で与えた被害は賠償しなければならない
「建物の所有者または管理者には建物の安全性を確保する義務があり、これには落雪で物や人に損害を与えないことも含まれます。屋根から雪が落ちて、物が壊れたり、通行人にケガをさせてしまった場合、家主は損害を賠償しなければなりません」
自分の家から落ちた雪で誰かに被害が生じた場合には、基本的に賠償責任が生じると考えていいようだ。それでは、どこまで対策をしていれば、「安全性を確保していた」といえるのだろうか。
「落雪防止措置を取っていれば、それだけで賠償責任を免れるかというと、そうもいきません。
どこまでの落雪対策を取っておく必要があるかは、豪雪地帯か、たまにしか降らないか、その地域の降雪量によって違いが出ます。
ただ、実際に落雪事故が生じてしまえば、防止措置は不十分だったとされる可能性が高いでしょう」
しかし、どれだけの雪が降るかは正確に予測できる人はいない。想定以上の大雪が、事故の原因というケースも多いのではないか。
●「天災だから仕方ない」という言い訳は通じない
「過去の降雪量や積雪量などと比較して、想定できないほどの異常気象だったと認められることはごくまれです。天災だから仕方ないという言い訳は通じないと思ったほうが良いでしょう。
通行人が大ケガをするなど結果が重大なこともありますし、リスクが高いことを十分認識して対策を取ることが必要です」
難波弁護士はこのように締めくくり、注意を促していた。家の管理を考える際には、雪がもたらすリスクも十分に考慮し、いざというときのために備えておく必要があるといえそうだ。