オーバーステイ(不法残留)をしている外国人は強制送還の対象となる。しかし、さまざまな事情により、日本に留まることを望む人もいる。
そんな外国人を救済する制度として「在留特別許可」がある。法務省がガイドラインを定めており、日本人との結婚や子どもの存在などを総合的に考慮し、法務大臣の裁量で在留資格が特別に与えられる。
3月22日、ある台湾人男性(40代)にも在留特別許可が下りていたことが明らかにされた。男性は同性愛者で、日本人のパートナー(50代)と20年以上同居する「同性婚」状態にあった。同性カップルの権利保障にかかわる話題として各所で報じられている。
ただし、在留特別許可の件数は大きく落ち込んでいるのが現状だ。
●許可率も大きく減少
法務省の統計によると、2008年に在留特別許可を受けた人数は8522人(難民認定にかかわるものを除く)。2011年(6879人)以降は減り続け、2017年は1255人まで落ち込んだ。2018年は1370人に増えたが、10年で85%近く減った計算だ。
許可率(許可数/既済総数)は79.5%(2008年)から56.6%(2018年)に減少している。
なぜ大幅に減ったのか。取材に対し、法務省入国管理局の担当者は、「厳格化しているということはなく、はっきりとした理由はわからない。ただし、退去強制処分に対する異議申出の件数が減っているという事実はある」と答えた。
●同じガイドラインで判断しているのにおかしい
外国人の人権にくわしい指宿昭一弁護士は、「ガイドラインは変わっていないのに、どうしてこんなに割合に差が出るのか」と法務省の判断を批判する。
「ここ数年、在留特別許可の事件に取り組む弁護士の間では、認定が極めて厳しくなったという共通認識があります。法務大臣の裁量が認められているとはいえ、権限を逸脱していると思います」
指宿弁護士は、認定が減ったのは、外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正(2018年)と東京五輪(2020年)をにらんだ動きだとみている。
「厳格化の背景には『外国人には問題がある』『厳しくしなければダメだ』という意識があると思います。しかし、必要なのは『厳格化』ではなく、『適正化』です。
入管自身が適切と考えて、ガイドラインを出しているんです。オリンピックがあろうが、同じように平等に適正に運用すべきでしょう」