排外主義的な団体が街頭やネットで「ヘイトスピーチ」を繰り返し、社会問題となっている状況を受け、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウはこのほど、在日コリアンに対する聞き取り調査の報告書を発表した。ヘイトスピーチを受ける側の人々がどのような体験をして、どのような感情を抱いたのか、具体的なエピソードをまとめたものだ。
調査は今年4月から7月にかけて、関西在住の在日コリアン16人を対象に実施された。個別インタビューの形式で、被害体験や被害感情を聴き取ったという。ヒューマンライツ・ナウは、調査の結果、「ヘイトスピーチが在日コリアンの人間としての尊厳を深く蹂躙するものであることが明らかになった」としている。
●名札を見られ、拡声器で名を連呼された
「マイクを一人一人回して、『朝鮮人はうじ虫だ!』『朝鮮人はゴキブリ!』『朝鮮人は死ね!』などと各自が発言し、それに対して他の参加者が拍手をしたりして参加者全員が興奮していた。名札を見られ、拡声器で名を連呼され、暴言を投げつけられた」
50代の男性は、勤務先の団体に対する”ヘイト・スピーチ街宣”に遭遇したときの経験をこう振り返った。「面と向かって憎悪感情を投げかけてくることに対して恐怖を感じた」という。
また、20代の男性は、次のように語っている。
「5年ほど前、4人の中年が行っていたヘイト街宣に遭遇した。目の前に立ち止まって堂々と見てやろうと思ったが、正直、怖かった。どれほど相手が弱そうでも恐怖を感じ、身体が動かなかった」
「自分でどうしようもできないことを理由に、『死ね』『殺せ』と言われることの不条理、痛みを感じる。ヘイト・スピーチをみたら、自分のことを言われている気がして、むかつく」
●「あなたは、この国に必要ない」と言われ、辛かった
10代の女性は、ヘイトスピーチをする側との「対話」を振り返り、次のように話している。
「ネット上の差別が激しい現状を何とかしたい。そうしたことを発信している人たちと話し合いたいが、話し合っても一方的に言われてしまうことが多い。
ヘイト街宣参加者の一人と一対一で話し合ってみたが、最後に『あなたは、この国に必要ない。(自国に)帰ってください』と言われて辛かった」
ヒューマンライツ・ナウは、今回の調査結果をふまえて、「日本政府に対し、人種差別の撤廃に向けた積極的な措置を直ちにとるよう提言する」と、報告書で記している。そのうえで、外国人差別・民族差別を禁止する包括的な人種差別禁止法の制定を求めている。
「在日コリアンに対するヘイト・スピーチ被害実態報告調査」の全文はこちらから