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13歳で結婚、14歳で出産――途上国の少女「早すぎる結婚」の大きすぎるリスク
「早すぎる結婚」の問題について話すネパール人の16歳・イスミタさん

13歳で結婚、14歳で出産――途上国の少女「早すぎる結婚」の大きすぎるリスク

国際ガールズ・デーの記念イベント「13歳で結婚。14歳で出産。恋は、まだ知らない。」が10月11日、東京都内で開かれた。開発途上国の少女たちの「早すぎる結婚」問題に焦点を当てたフォーラムで、13歳の花嫁マリアマの置かれた環境を伝える動画が流れると、参加者たちは息を飲んだ。

世界で最も貧しい国の一つに数えられるアフリカ・ニジェールに住むマリアマは、ある日突然、見知らぬ男性との「結婚」を言い渡された。マリアマは「結婚すると知っても、私は全然嬉しくありませんでした」「不安で食事もできず、夜も眠れません」と口にした。

動画にはニジェールの医師が登場し、「骨盤が未発達なので、出産自体が無理」と話した。また、15歳で出産し、傷ついて一人で用を足せない身体になったという少女が、カメラの前で「もう二度と妊娠したくない」「もうたくさんです」と告白した。

開発途上国では毎年1000万人、およそ9人に1人の少女が、15歳になる前に結婚させられている——。フォーラムでは映像やデータを基に、早すぎる結婚の現状やその背景を話し合った。

●「早すぎる結婚」の背景は・・・

彼女たちが嫁ぐ先は多くの場合、10歳以上も年が離れた男性のもと。11歳の少女が40歳の男性と結婚した例もあるという。結婚式当日を迎えるまで、誰と結婚するのか分からない場合も少なくないそうだ。

国連人口基金東京事務所長をつとめる佐崎淳子さんによると、早すぎる結婚が行われる背景の1つに、「宗教的な考え」もあるという。佐崎さんはネパールの例を、次のようにあげた。

「ネパールでは、18歳以下で結婚した少女の割合が40%にのぼります。ネパール人の8割が信仰するヒンドゥー教では『娘が初潮をむかえる前に結婚させると縁起が良い』と信じられており、幼いうちの結婚はごく普通のことなのです」

そのネパールからは、現地で「早すぎる結婚対策プロジェクト」に参加している16歳の少女・イスミタさんがフォーラムに参加していた。イスミタさんは、結婚前に花嫁から夫へ金銭を渡す「持参金制度」について言及し、「経済的に貧しい家庭にとって、持参金制度は大きな負担です。ただ、花嫁の年齢が若いと持参金が少なくて済むため、親は娘を幼いうちに嫁がせたがるのです」と語った。

●「妊産婦死亡率は成人の2倍」少女の身体に与えるリスク

早すぎる結婚には様々なリスクがある。イスミタさんは、「私のいるコミュニティでは、多くの女の子が早すぎる結婚をしています。女の子は結婚すると、学校を辞めなくてはいけません。教育を受けられなければ、収入を得られる仕事に就けず、貧困が加速します。また、早すぎる結婚をした女の子は、年が離れた夫から暴力を受けることも多いです」と語る。

また、早すぎる結婚の先にある早すぎる妊娠・出産のリスクも大きい。

佐崎さんは「15歳から19歳で出産した場合の妊産婦死亡率は、20歳から34歳で出産した場合のおよそ2倍です。また、早いうちに出産し、多産で傷が癒えないうちに薪を運ぶなどの労働をすることで、身体に負担がかかって子宮が体外に出てしまい、排泄障害を負うこともあります。それは恥ずかしいことと考えられ、誰にも相談できず悩んでいる子は少なくありません。また、夫や家族から差別され暴力をふるわれることもあります」と強い口調で語った。

●「発信しなければ、味方とはいえない」

様々な問題を含む「早すぎる結婚」――。しかし現地では、親から子へと脈々と受け継がれてきた習慣であり、多くの親は疑問を持たず、幼い娘を嫁がせる。

イベントを主催したプラン・ジャパンの理事をつとめる大崎麻子さんは、「早すぎる結婚が行われている地域は、農村部が圧倒的に多い。そこにはインターネットもフェイスブックもない。また、読み書きができない人も多いため、早すぎる結婚のリスクについての情報を得ることができません」と指摘する。

プラン・ジャパンでは、外からの情報を得にくい地域への啓蒙活動として、紙芝居や演劇などで、早すぎる結婚のリスクを知らせている。また、イスミタさんのような現地の若者を教育し、彼らを通して、地域の人々を啓発する活動も行っているという。

「発信しなければ、私たちの味方とはいえません」——イベントで上映された、途上国の少女の困難な現実を描いた映画に出てきたセリフだ。フォーラムの最後には「今日この場で知ったことを、ぜひ家族や友達に話したり、フェイスブックでシェアしてほしい」と呼びかけもあった。

初恋も知らないような年齢で、年の離れた男性と結婚させられ、妊娠・出産する少女がいるという現実。この現実をただ知るだけではなく、誰かに話し伝えることが、未来を変える一歩になるかもしれない。

(弁護士ドットコムニュース)

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