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「いつかはゆかし」のアブラハムが受けた「業務停止命令」はどれだけ重い処分か?
「業務停止命令」とはどんな性質のものなのだろうか?

「いつかはゆかし」のアブラハムが受けた「業務停止命令」はどれだけ重い処分か?

「いつかはゆかし」「月5万円の積立で1億円」。テレビ、雑誌、電車、インターネットなどで、大々的に展開された広告を覚えている人も多いだろう。こうした宣伝を行っていた東京都内の投資助言・代理業者アブラハム・プライベートバンクがこのほど、関東財務局から6カ月間の「全業務停止命令」と「業務改善命令」を受けた。

関東財務局の発表によると、無登録で海外ファンドの募集・私募を取り扱っていたことや、《著しく事実に相違する表示又は著しく人を誤認させるような表示のある広告》を出していたことなどが、金融商品取引法(金商法)違反にあたったという。

この命令で、同社は2014年4月10日まで全業務を「停止」しなければならないほか、様々な業務改善を余儀なくされることとなるようだ。企業の業務が半年もストップすれば、相当なダメージであることは想像に難くないが、そもそもこの「業務停止命令」とはどんな性質のものなのだろうか。その根拠や目的について、金融業界にくわしい桑原義浩弁護士に聞いた。

●金融商品を取り扱うには「登録」が必要

金融商品取引業を行うためには、原則として内閣総理大臣の登録を受け、金融庁の監督に服する必要があるという。桑原弁護士は次のように解説する。

「金商法では、金融商品取引業を行う者は登録を受ける必要があります。これによって、問題のある業者は、登録申請段階で拒否事由があればそもそも業務を行うことができないことになりますし、登録後も内閣総理大臣(実質は金融庁)の監督を受けることになります。

また、金商法では、金融商品取引業者の業務の運営や財産の状況に関し、公益または投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき、内閣総理大臣が、業務の方法の変更など、業務の運営や財産の状況の改善に『必要な措置』をとるべきことを命ずることができる、とされています(金商法51条)」

これは「業務改善命令」に関する規定だが、アブラハムに対しては、業務改善命令に加えて、「業務停止命令」も下された。どれぐらいの重みを持つ処分なのだろうか。

「『業務停止命令』はそういった命令の中で、登録取消処分についで重い処分です。

最近では、AIJ投資顧問会社の年金消失事件で、1カ月の業務停止命令が出された例(翌月に登録取消処分)があります。その後、AIJの関係者が衆議院財務金融委員会に参考人招致されたり、詐欺容疑で刑事事件として立件されたりしました。また、MRIインターナショナルの事件では『登録取消処分』が出されています」

●アブラハムへの処分は「業務停止」の最大級

業務停止命令の期間は最大6カ月で、業務の一部だけが対象になるケースもある(金商法52条)。つまり、全業務を6カ月間という今回の処分は、業務停止の中では最大級と言えるだろう。

今後、アブラハムの営業はどうなることが予想されるだろうか。桑原弁護士は次のように話している。

「業務停止命令はそれだけ大きな影響をもつものです。6カ月もの業務停止命令を受けた以上、同じ商品名やブランド名での営業は今後もできないといってもいいでしょう。

ただ、業務停止命令の期間経過後に、業者名や営業内容を変えて営業を続けることもあるため、会社が存続し続ける可能性はあります」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

桑原 義浩
桑原 義浩(くわはら よしひろ)弁護士 弁護士法人しらぬひ柳川事務所
日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長(金融サービス部会、違法収益吐き出し部会)、九州弁護士連合会消費者問題連絡協議会副委員長、福岡県弁護士会消費者委員会、民事手続委員会等。全国証券問題研究会、全国先物取引被害研究会などに多数参加している。

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