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乳液容器に漂白剤を入れておいたら、盗んだ人からクレームが・・・悪いのはどっち?
乳液のボトルのなかに漂白剤が入っていたら、誰でもビックリするだろう

乳液容器に漂白剤を入れておいたら、盗んだ人からクレームが・・・悪いのはどっち?

インターネットサイト「マイナビニュースQ&A」に、9月下旬に掲載された「相談」が話題を呼んでいる。内容は次のようなものだ。

通っているプールで、乳液や化粧水などが結構な頻度で盗まれるので施設に伝えたのだが、「盗難はダメ!」という張り紙をするだけだった。そこで、ためしに「乳液」の容器に「漂白剤」を入れてみた。すると、盗んだ女性が「あんたの乳液!!なんか変な液体が入ってたんだけど!!」と文句を言ってきた。見ると、盗んだ女性の前髪は色が変で、目も真っ赤、肌には吹き出物のようなものがあった。盗んだ女性は「訴えてやる!!」といっている……。

相談者は「これって何かマズイんですか? 私はただ自分の乳液の容器に漂白剤を入れていただけなのですが」と書いている。勝手に人のものを盗んでおきながら、それで被害にあったと文句を言うのは筋違いというわけだろう。

ちょっと普通ではありえないと思われる話なので、「作り話なのでは?」という指摘もあるほどだが、もし実際にこのようなことが起きたとしたら、どうなのだろう。「乳液を盗んだ女性」が裁判に訴えたら、「相談者」は賠償しないといけないのか。西田広一弁護士に聞いた。

●誰かが漂白剤を使って傷害が発生することは「予期できた」

「『乳液や化粧水などが結構な頻度で盗まれる』というのは、勝手に使われる、もしくは鍵のかからないロッカー等から乳液や化粧水が持ち去られる、という趣旨でしょう。

『相談者』は、乳液や化粧品を盗まれることの対抗手段として、中身を入れ替えることを考えたのでしょう。そのお気持ちは分かります」

西田弁護士はこう切り出した。

「しかし、この2点から考えると、相談者は、誰かが勝手に使うことを想定したうえで、乳液の容器に漂白剤を入れたということになるでしょう。

つまり、誰かが漂白剤を顔につけ、『前髪は色が変で、目も真っ赤、肌には吹き出物』といった結果が発生することを、相談者は予期できたということです。

そのような場合、相談者が行ったことは『不法行為』にあたり、損害賠償の責任が発生してしまいます」

勝手に使った人にも落ち度があるのでは?

「確かに、勝手に乳液を使うのは窃盗罪となると思われます。損害賠償の金額は、ある程度、過失相殺(民法722条)されて、減額されるでしょう。

しかし、乳液を勝手に使ったり、荷物から乳液だけを持ち去るという程度の行為は、かなり軽微な犯罪です。

それに比べると、漂白剤を使わせて傷害を引き起こすという結果は重大です。したがって、減額は損害額の2、3割程度にとどまると思われます」

●「相談者」の行為は傷害罪に該当する可能性がある

「一方で、相談者は、窃盗犯人が漂白剤を身体に使うことを予期していたのですから、刑事的にも傷害罪(刑法204条)の責任を負うでしょう。

正当防衛(刑法36条)は、急迫不正の侵害がないため、成立しないと思われます」

西田弁護士はこのように結論づけていた。

そもそも乳液や化粧水であれば、カギのかかるロッカーに入れたり、袋に入れて持ち歩くなど、他にも手の打ちようがありそうだ。容器の中身を漂白剤に入れ替えるのは、対抗手段として「やりすぎ」で不適切ということなのだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

西田 広一
西田 広一(にしだ ひろいち)弁護士 弁護士法人西田広一法律事務所
1956年、石川県小松市生まれ。95年に弁護士登録(大阪弁護士会)。大阪を拠点に活動。大阪弁護士会消費者保護委員会委員。関西学院大学非常勤講師。最近の興味関心は、読書(歴史小説)、食品の安全、発達障害など。

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