弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 離婚・男女問題
  3. 有名ブロガー「事実婚」騒動 「人妻との結婚」が認められる条件とは?
有名ブロガー「事実婚」騒動 「人妻との結婚」が認められる条件とは?
配偶者のいる女性と「事実婚」することはできるのだろうか?

有名ブロガー「事実婚」騒動 「人妻との結婚」が認められる条件とは?

有名ブロガーのヨシナガさんがこのほど、ツイッターなどで「人妻と事実婚をした」と報告し、注目を集めた。その後、謝罪・撤回したが、本人から具体的な説明がなかったため、「どういうことなのかさっぱり分からない」と物議を醸すことになった。

ヨシナガさんは6月30日、ツイッターやフェイスブックに人妻と結婚したという内容の記事を投稿。「事実婚」であると断りつつ、正装したヨシナガさんとウェディングドレス姿の女性の写真も掲載した。その際、相手として挙げたのが有名漫画家の妻の名だったため、その漫画家の代理人がメディアに対しツイートの内容を否定するなど、一時騒然となっていた。

ヨシナガさんは「今回の件では大変お騒がせして申し訳ありませんでした」とツイッターで謝罪。「事実婚という言葉は誤用になります」と当初の報告を撤回した。その後は、この件について沈黙を守っており、具体的にどのような事情で今回の騒動が起きたのか明らかになっていない。

このように事実関係が定かでないところがあるが、そもそも、人妻と「事実婚」などということがあり得るのだろうか。もし可能だとした場合、もともとの夫に対して、慰謝料を払う必要はないのか。離婚問題にくわしい島野由夏里弁護士に聞いた。

●人妻との「事実婚」はあり得る

「事実婚とは、婚姻の届出がないものの、当事者間に『婚姻意思』があり、さらに事実上、法律婚と同様の夫婦共同生活を送っているというケースです。『内縁』と同じ意味です。

『結婚』というと、通常、法律婚が頭に浮かびますが、最近は、夫婦同姓制度による社会生活上の不利益を避けるために、内縁の形をとるカップルもいらっしゃいます」

――ズバリ、人妻と事実婚はできる?

「事実婚、つまり、内縁となることは、相手が人妻であっても可能です。

ただし、内縁といえるためには、婚姻意思と夫婦共同生活の実態がなくてはなりません。相手の女性と法律上の夫との関係が円満に続いているような場合には、他の男性と内縁状態にあるとは認められにくいと思います。

一方、戸籍上は夫婦であっても、実際には『没交渉』の関係で『戸籍上のみの夫婦』にすぎないという場合には、その人妻と夫以外の男性との内縁関係が認められることはあり得ます」

――「婚姻意思」と「夫婦共同生活の実態」って?

「婚姻意思は、単なる交際や同棲ではなく、結婚をする意思です。『内縁』と言えるかどうか、裁判などで判断する際には、婚約、結納、結婚式、結婚披露宴など結婚に伴うイベント等があり、婚姻意思を対外的に公示しているかも非常に重要になってきます。

たとえば、結婚式を行い、その写真をツイッターやフェイスブックに掲載し、広く知らしめていれば、それは双方の婚姻意思を明確にするものとして、とても重要です。

一方、夫婦共同生活の実態というのは、二人が一緒に暮らしているかや身上・経済的な結びつきがあるかどうか、といった問題です」

●慰謝料を払わなければいけないのは、どんなとき?

「一方、慰謝料については、ケースバイケースです。

妻が法律上の夫以外の男性と出会い、内縁関係になったことが原因となって、法律上の夫との関係が破たんしたような場合は、慰謝料の支払い義務が発生します。内縁の夫と妻が、法律上の夫に対して、不貞行為の慰謝料を支払うことになるでしょう」

――では、先に夫婦生活が破たんしていた場合には?

「内縁の夫とのことがなくても、既に法律上の夫との関係が冷え切っていて、事実上離婚状態であった場合には、内縁の夫が原因で法律婚の方の夫婦関係を破壊したとは言えません。

その場合は、慰謝料を支払う義務は生じません。法律上の夫との関係が破たんした原因が何かという点が重要です」

――どうなったら『破たん』と言える?

「何を『破たん』と見るかについて、裁判所が最も重視するのは、別居が先行しているか否かです。

『関係が始まったのは破たん後だった』いうのは、不貞行為と慰謝料請求をめぐる訴訟で、よく出される『抗弁』ですが、夫婦が同居している間に、他の異性と性的関係を持ち、その後内縁になったという場合だと、基本的には破たん後とは認めづらいでしょう。

家庭内別居で、既に配偶者との関係は冷え切っていると説明されたうえで交際を開始しても、実は夫婦仲は破綻しておらず、訴えられるということは、ままありますので、特に注意が必要です」

このように、たとえ相手が人妻だとしても、一定の条件を満たせば、「事実婚」となることも可能なようだ。今回のケースは当事者が「事実婚という言葉は誤用」と弁明していることからすると、必要な条件を満たしていなかったのかもしれない。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

島野 由夏里
島野 由夏里(しまの ゆかり)弁護士 弁護士法人カリス 島野ゆかり法律事務所
弁護士法人カリス 代表弁護士。 千葉県弁護士会所属。不動産契約関係トラブルや交通事故等の一般民事事件、離婚・相続(国際離婚・相続を含む)、債務整理等を幅広く扱う。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では正社員スタッフ・協力ライター・動画編集スタッフと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

正社員スタッフ・協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする