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小中学生の宿題を請け負う「宿題代行業者」 法律的な問題はあるか?
小中学生の宿題を請け負って、代わりに解いてあげる「宿題代行業者」がいるという

小中学生の宿題を請け負う「宿題代行業者」 法律的な問題はあるか?

小中学生の宿題を請け負って、代わりに解いてあげる「宿題代行業者」が物議を醸している。とある代行業者のサイトを見ると、ふだんの宿題から読書感想文、図画工作など様々な課題に対応しているようだ。価格は400字詰め原稿用紙1枚分の読書感想文が2000円から、「月の満ち欠け調べ」といった夏休みの自由研究は5000円から、などとなっている。

業者側は学校の宿題を「時間の無駄」ととらえ、受験勉強に集中できるといった「メリット」を強調しているようだ。だが宿題をサボることが、本人の学力を向上させないのは明らかだろう。百歩譲って宿題に無駄な部分があるとしても、提出状況が成績を左右することも考えれば、他人にやらせるのは「ズル」なのではないか。

こういった「宿題代行」を請け負う業者には、法的な問題点はないのか、森本明宏弁護士に聞いた。

●学校が宿題を出す「目的」には反するが・・・

「学校が宿題を出す目的は、生徒の学力向上や学習習慣の確立のためです。『宿題代行業者』が本人に代わって宿題を行うことは、その目的に反します」。森本弁護士はまず、こう苦言を呈する。

では、こういった業者に「法的責任」を問うことはできるのか。

「理屈の上ではあり得ます。学校が生徒に宿題を出すことは、上記の目的にもとづく学校の『業務』だとします。そして、その業務を妨害されたとして、業者側に民事上の損害賠償請求(民法709条)をするという構図が考えられます。

しかし、宿題の提出状況や出来が生徒の成績に関わるとはいえ、それによって学校そのものに何らかの実害が生じることまではあまり想定できません。損害賠償をしなければならないほどの違法性や損害があるとまでは、認められにくいと思います」

刑事責任はどうか。

「同じく理屈上の話ですが、学校を欺いて『業務妨害』をした罪、つまり偽計業務妨害罪(刑法233条)が成立するかどうかが問題となり得ます。

判例や学説上の争いがあるため断言はできませんが、たとえば大学入試で、組織的なカンニングや替え玉受験を行ったようなケースであれば、大きな混乱・支障を生じさせたとして『業務妨害』とされる可能性がなくはないと思います。

しかし、小中学生の宿題代行程度では、学校業務にそれほどの混乱・支障が生じているとまでは言い難いですね。そう考えると、偽計業務妨害罪に問うことも、現在の法律の枠組みでは難しいと思います」

なるほど、モラルの問題はともかく、法的な責任まで問えるかというと難しいようだ。個人的には宿題は自分でできる範囲でやり、それ相応の評価を受ければ良いだけに思えるのだが・・・・。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

森本 明宏
森本 明宏(もりもと あきひろ)弁護士 四季法律事務所
愛媛弁護士会所属(2002年弁護士登録)。2010~2011年度、愛媛弁護士会副会長。2020年度、愛媛弁護士会会長。日本スポーツ法学会会員。

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