浜松市の航空自衛隊第2術科学校に所属する50代の自衛官が、営利業務(副業)を禁じた自衛隊法に違反したとして、今年2月、停職40日の懲戒処分をうけたと報じられた。その副業とは「悩み相談」。1999年ごろから口コミや自身のホームページを介して、約100人の人生相談に応じ、2000万円を稼ぎ出したという。
この自衛官が処分を受けたのは、自衛隊法の副業禁止規定に抵触したためだ。報道によると、高額と思える「相談料」をとっていたことについては、罪に問われてはいないようだ。しかし、人の人生相談にのるだけで、トータル2000万円とは・・・。
臨床心理士などの資格をもっていない人が「悩み相談」で儲けることは、法的に問題ないのだろうか。前島申長弁護士に聞いた。
●心理専門職に「国家資格」はない
「日本では、心理カウンセラーなどの心理専門職に関する国家資格はありません。そのため、営利目的つまり報酬を得る目的で『悩み相談』などのカウンセリングを行っても、それ自体が法律に反することにはなりません。
また、心理カウンセラー、心理セラピストなど様々な名称で、他人の悩みを聞き、それに対してアドバイスする対価として、金員を受領する業態が行われています。そして、その際に、どのような価格設定をするかも、各人の自由となります」
前島弁護士は意外に自由な「悩み相談」業界の実態を話す。では、まったく何の規制もないのだろうか?
「もちろん、無責任に不適切なアドバイスを行ってもいいというわけではありません。
まず、カウンセラーが、精神科医であるとか、医学的知見があるなどと偽って、医学的なアドバイスや治療を行うことは、医師法に反する可能性があります。
また、臨床心理士と名乗るには、文部科学省が認証した公益財団法人の『日本臨床心理士資格認定協会』により専門的な資格をとる必要があります」
全国の小中学校にスクールカウンセラーとして派遣されるのが、この臨床心理士である。
●「詐欺罪」として罰せられる可能性も
資格がなくても「悩み相談」に応じることができるとはいえ、注意が必要なケースもある。
「宗教的な観点から悩みを聞いた際に、相談者に対し『悪い霊が憑いているから供養をする必要がある』などと虚偽のアドバイスを行い、祈祷名目で金員を受領した場合には、詐欺罪として罰せられる可能性があります。
いずれにしても『悩み相談』を利用する人は、相談を受ける相手が信頼できるかどうか、慎重に見極め、自己責任において、そのアドバイスを聞き入れるかどうかを判断していく必要があると思われます」
悩み相談は、自らの恥部や秘密を相手にさらすことである。友人や家族ではなく、金銭を介した第三者に相談すれば、弱みにつけこまれることだってあるかもしれない。注意が必要だ。