路上からの光景を簡単に見ることができるグーグルの「ストリートビュー」で下見をして、電気設備会社から銅線を盗んだとして、建設作業員の男性ら14人が窃盗や建造物侵入の疑いで、兵庫県警に逮捕された。
報道によると、男性たちは遊び仲間や建設現場の知り合い。2~5人のグループに分かれ、深夜に盗みを繰り返していた。その際、スマートフォンの地図アプリで「電気会社」を探し、ストリートビューで周辺の様子を調べていたという。
今回のように犯罪にストリートビューが利用された場合、サービスを提供するグーグルは責任を問われないのだろうか。小田紗織弁護士に聞いた。
●「現場周辺に行けば、誰でも確認できる情報」
まず、グーグルは刑事責任を問われないのだろうか。
「一般に、盗みを容易にしたり、手助けしたりすれば、窃盗罪の『ほう助』にあたります」
今回の事件でグーグルは、盗みに入る建物の周辺情報をストリートビューで提供したとして、「盗みを容易にした」といえないだろうか。
「グーグルがストリートビューで提供する情報は、公道から周囲全体を撮影した画像です。実際に現場周辺に行けば、誰でも確認できる情報です。
したがって、今回の犯行が、ストリートビューによって、特別に『容易になった』とはいえないでしょう」
●「ユーザーのモラル向上が求められている」
では、民事上の責任はどうだろうか。
「公道から建物の外観を撮影され、ストリートビューで公開されたことをもって、民事上の責任を問うことも難しいです。
過去には、ベランダに干していた下着を撮影されて、ストリートビューで公開されたなどとして、グーグルに対して慰謝料を求めた訴訟がありました。
しかし、画像を見ても、下着なのか洗濯物なのか何なのかが判然としない事案で、結局、請求は認められていません」
もし今回、ストリートビューではなく、インターネット上で調べた画像を悪用していた場合はどうなるのか。
「現行の法制度・裁判例のもとでは、情報の掲載自体が適法であれば、掲載者の責任を認めることは難しいでしょう。私たちユーザーのモラル向上が求められているといえます」
小田弁護士はこのように述べていた。