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河川敷に「犬の死骸」44匹 「子犬工場のビジネスモデルはもう通用しない」と弁護士
罪のない多くの犬たちの命が奪われた

河川敷に「犬の死骸」44匹 「子犬工場のビジネスモデルはもう通用しない」と弁護士

栃木県の宇都宮市と那珂川町で、大量の犬の死骸が発見された——こんなニュースが11月上旬、話題になった。犬の死骸は、10月31日と11月1日に宇都宮市の鬼怒川河川敷で44匹見つかった。11月5日には那珂川町の山中で、27匹の死骸と衰弱した犬5匹が発見されたという。

報道によると、発見された犬はいずれも毛玉がひどく、爪がのびており、一部の犬は蚊が媒介する伝染病「フィラリア」に感染していた。犬種はミニチュアダックスフントやトイプードルなどの人気犬種で、雌犬の多くは数回出産した形跡があった。栃木県警は、悪質な繁殖業者らが劣悪な環境で犬を飼育し、処理に困って捨てた可能性があるとみているという。

何の罪もない犬たちが死骸となって発見された今回の事件には「酷すぎる」「あり得ない」「絶対に許せない」と非難する声がネットで広がった。犬を捨てたとみられる繁殖業者は、何らかの罪に問われるのだろうか。動物愛護法にくわしい細川敦史弁護士に聞いた。

●繁殖業者はどんな罪に問われるのか?

「動物の死体は、一部の例外を除き、廃棄物処理法上の『一般廃棄物』に該当します。

犬の死体を捨てたのであれば、いわゆる不法投棄として廃棄物処理法違反となります。今回のケースで、警察は廃棄物処理法違反で捜査を進めているようです」

廃棄物というのは、あんまりな気がするが・・・。まだ生きている犬もいたが、そちらはどうなのだろうか?

「生きている状態の犬を捨てると、捨てた場所や状況によっては、動物愛護管理法の動物遺棄罪が成立します。

ネットでは、犬をモノ扱いせず、動物遺棄罪で捜査すべきとの意見が散見されますが、警察は初動段階の事実関係から、そうした形で捜査を進めているだけで、最終的な判断ではないでしょう」

細川弁護士はこう述べる。

●動物は「大量生産・販売・消費」のシステムになじまない

今回の犬たちは、悪質な繁殖業者によって捨てられた可能性があると、警察は見ているようだ。業者はどのような対応を取るべきだったのだろうか。

「業者が、繁殖に適した年齢を過ぎた犬などを自治体に引き取ってくれるよう求めても、拒まれる可能性があります。これは、昨年施行された法改正によるものです。

繁殖業者には、管理できなくなるような頭数を飼育しないこと。そして繁殖を引退した犬については、引き取り先を探して、余生を全うさせることが求められています」

犬を繁殖させ、育てる人たちは「ブリーダー」と呼ばれている。これに対し、犬を無計画に繁殖し、経営に行き詰まったら処分する悪質な繁殖業者は、「パピーミル(子犬工場)」と呼ばれるのだと、細川弁護士はいう。

「命ある動物は、単なる『モノ』とは違い、大量生産・販売・消費のシステムにはなじみません。

このような考え方が社会に広まるにつれ、ペット販売の法規制が強まってきました。その結果、従来のビジネスモデルは通用しなくなっています。

こうした流れに付いていけず、事業が立ち行かなくなった繁殖業者は、ペット用品の販売などに転換するか、ペット産業自体から撤退することも現実的な選択ではないかと思います」

このように、細川弁護士は指摘していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

細川 敦史
細川 敦史(ほそかわ あつし)弁護士 春名・田中・細川法律事務所
2001年弁護士登録。交通事故、相続、労働、不動産関連など民事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。NPO法人どうぶつ弁護団理事長、動物の法と政策研究会会長、ペット法学会会員。

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