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石原さとみさんが「偽インスタグラム」に注意呼びかけ「なりすまし」は罪になるのか?
芸能人の「なりすまし」事件は、これまでにも何度も話題になっている

石原さとみさんが「偽インスタグラム」に注意呼びかけ「なりすまし」は罪になるのか?

「最近、わたし石原さとみの名前でInstagram! Facebook! Twitter! が出回っているみたいなんですが、、、」――女優の石原さとみさんが10月13日、公式LINEアカウントのメッセージで、SNSの「なりすまし」について言及した。

石原さんは、これらのSNSのアカウントについて、「全て私ではありません」として、「ホリプロのHP、ホリプロスクエア、この公式LINE以外にオフィシャルなものは一切発信していないので注意してくださいね」と呼びかけた。

石原さんだけでなく、ネット上での芸能人の「なりすまし」被害は後を絶たない。「有名税」といった言葉もあるが、そもそも「なりすまし」に法的な問題はないのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。

●他人名のアカウントを作っただけでは、刑事責任を問われない可能性が高い

「『なりすまし』は今回だけでなく、しばしば発生しており、一種の社会問題となっています。私自身もfacebook、twitter、LINEなど、さまざまなSNSを使用していますので、なりすましの問題は、他人事ではありません」

西口弁護士はこう指摘する。なりすましを法的に考えると、どんな風になるのだろうか?

「『なりすまし』は、(1)『SNSアカウントを他人名義で勝手に作ること』と(2)『作ったアカウントで投稿すること』に分けて考える必要があります。

まず、(1)『SNSアカウントを他人名義で勝手に作ること』が法的に問題ないか考えてみましょう。

インターネットの利用に関する法律のひとつに、『不正アクセス禁止法』という法律が存在します。この法律では、『何人も、不正アクセス行為をしてはならない』(3条)としています。

言葉のイメージで考えると、なりすましはこれにあたりそうですが、『不正アクセス』とはパスワード等を盗んでログインする、といった行為を指します。有名人の名前でSNSのアカウントをつくることは、不正アクセスに該当しません」

ほかの犯罪はどうだろうか?

「ちょっと見方を変えて考えると、SNSに他人の名前のアカウントをつくることは、不正な記録をサーバ上に作ったと言えるかも知れません。

仮にそうした行為と言えれば、刑法161条の2第1項の私電磁的記録不正作出罪に問われる可能性があります。

ただし、この犯罪で問題になる『記録』とは、『法的な権利義務や社会生活を営む上で重要な事実についての記録』のことです」

SNSのアカウントは、どうだろうか?

「過去の裁判例では、企業のサーバーに保存されていた顧客データベースのファイルを改ざんしたことが、本罪にあたるとされていました。しかし、ざっと調べた限りですが、SNSのアカウントについてはまだ判断がなされていないようです。

他人のSNSのアカウントを勝手に作ることが、『法的な権利義務や社会生活を営む上で重要な事実についての記録』を作ったといえるかというと、現時点でそう判断するのは、難しいように思えます。

結局、刑法的には、他人のSNSアカウントを作っただけでは処罰される可能性は低いでしょう」

●名誉を害するような投稿をしたら犯罪にあたる

「次に、(2)『作ったアカウントで投稿すること』について考えてみましょう。

アカウントを作っただけにとどまらず、有名人の『なりすまし』アカウントを使って、その有名人の名誉を傷つけるような投稿をしたりすれば、その行為は名誉毀損にあたります。

刑事上は名誉毀損罪に問われる可能性がありますし、民事上では、不法行為に基づく損害賠償を請求される可能性があります。

また、有名人の写真を無断利用すれば、それは肖像権などの権利侵害になります。

この場合も、不法行為に基づく損害賠償請求をされる可能性があります」

西口弁護士はこのように指摘していた。面白半分で偽アカウントを作ると、いつか手痛いしっぺ返しを受けることになるかもしれない。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

西口 竜司
西口 竜司(にしぐち りゅうじ)弁護士 神戸マリン綜合法律事務所
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。

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