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柳美里さん、雑誌「創」の原稿料未払いを告白→編集長「出版不況の中、無理を重ねた」
月刊誌「創」の篠田博之編集長(6月8日撮影)

柳美里さん、雑誌「創」の原稿料未払いを告白→編集長「出版不況の中、無理を重ねた」

月刊誌「創」の原稿料が長期間にわたって未払い状態になっていることを、芥川賞作家の柳美里さんがブログで明らかにして、話題になっている。柳さんは「とにかく、稿料を支払う、という当たり前のことをしてください」と、創の篠田博之編集長に求めている。

一方、篠田編集長は10月17日、発行会社のウェブサイトで「作家・柳美里さんとのことについて説明します。」と題した記事を公開。「赤字が続き、制作費がまかなえなくなっています」「早急に話し合いをし、対処したい」と述べている。

発端は、10月7日発売の月刊「創」11月号で、柳さんの連載エッセイ「今日のできごと」が休載になったことだった。柳さんは10月15日、「創休載の理由」と題した文章をブログで公開し、何年間も原稿料が支払われていないことを告白した。

●未払いエッセイの原稿料「原稿用紙3枚と写真で5万円」

ブログによると、柳さんが9月1日、篠田編集長に「稿料未払い分を計算して、振り込んでください。全額振り込まれるまで原稿を書くことはできません」とメールで伝えたところ、篠田編集長から、「ショッキングなメールでしたので、考える時間が必要でした。おっしゃること、もっともだと思います。何とかしようとは思っているのですが、大変な時期に力になれずにいて申し訳ありません」と返事があり、連載が休載になった。

柳さんは、「何故、支払ってもらえない稿料を支払ってください、とお願いすることが『ショッキング』なのでしょうか?」「筆者に稿料を支払うことは、筆者の『力になる』ことではありません。労働の対価を支払うことです」と訴えている。

10月16日に更新されたブログでは、柳さんが改めてこの日、篠田編集長に支払いを求めるメールを送ったことが明らかにされている。それによると、篠田編集長からは、「柳さんとは長いおつきあいだし、表現者として尊敬している人なので、誠意をもって対応するつもりです」などの釈明の言葉が返ってきたという。

柳さんは、「稿料は、長い付き合いだから支払う、表現者として尊敬しているから支払う、という筋合いのものではありません」と反論している。また、原稿依頼時の約束が、400字詰め原稿用紙3枚と写真で計5万円だったことを明らかにした。

●篠田編集長「赤字補填にも限界があり、迷惑をかけた」

柳さんのブログでの情報発信を受けて、篠田編集長も10月17日未明、自らが社長をつとめる「創出版」のブログを更新。冒頭で「柳さんの主張は正当です」と述べつつ、「雑誌の赤字を個人で補填してきたわけですが、私はもともと会社からは報酬を得ていないので、補填するにも限界があり、いろいろな人に迷惑をかけるようになってしまいました」と釈明した。

出版不況にも触れ、「ビジネスとして考えるなら雑誌を休刊させるしかないのですが、休刊させずにがんばってほしいと言ってくれる人も多かったので、無理を重ねてきました。連載執筆者の方たちには事情を説明して、原稿料にあたる分を出資という形にしてもらい支援していただけないか、と2年前の設立30周年の時にお願いし、応じていただいた人もいます」と苦しい状況であることを説明した。

柳さんのエッセイの休載理由を掲載しなかったことについては、「私の説明ができていなかったことや認識不足を思い知らされてショックを受け、一度お会いして話をしてからと思っていました。11月号で終了の説明をしなかったのは、話しあいのうえでと考えたからです」と述べ、話し合いを行う考えを示している。

篠田編集長は17日、弁護士ドットコムの取材に対し、「事実関係はおおむね柳さんがブログに書いたとおりです。忙しくて、柳さんとのやり取りがうまくいっていなかったのが根本問題です。今はメールで直接やりとりをしていて、今日、こちらから連絡をすることになっています」と話した。

(弁護士ドットコムニュース)

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