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「死刑の実態は日本人から隠されている」弁護士たちが「絞首刑」のDVDを作ったワケ
大阪弁護士会(石田法子会長)の弁護士たちが東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を開いた

「死刑の実態は日本人から隠されている」弁護士たちが「絞首刑」のDVDを作ったワケ

日本でおこなわれている「死刑」の実態を広く伝えようと、大阪弁護士会は「絞首刑を考える」というタイトルのDVDを制作した。その英語版が完成したのにあわせ、大阪弁護士会(石田法子会長)の弁護士たちが10月16日、東京・有楽町の外国特派員協会で、DVD上映会と記者会見を開いた。

死刑執行の手段として日本の拘置所で実施されている「絞首刑」。DVDは、その具体的なメカニズムや歴史的な位置づけについて、人体のイラストなどを用いて説明するというものだ。上映時間は約30分。特に、絞首刑で死に至る過程について、オーストリア法医学会会長のラブル博士の分析などをもとに、くわしく紹介している。

●「なぜ、知らない制度について是非が言えるのか?」

日本の憲法は「残虐な刑罰」を禁止している。刑事事件の弁護人からは「死刑は『残虐な刑罰』であり、違憲ではないか」という問題提起が何度もされてきたが、最高裁判所は1955年に「絞首刑は残虐な刑罰ではない」と判断を示している。ところが、大阪弁護士会のDVDによると、実際の死刑の中には、執行から死亡までに数分間かかったり、断頭によって亡くなるといった「残虐なケース」があるという。

DVDの制作を担当した大阪弁護士会の「死刑廃止検討プロジェクトチーム」で事務局長をつとめる正木幸博弁護士は会見で、次のように疑問を呈した。

「絞首刑のくわしい内容は、日本人の目から隠されている状況だ。絞首刑がどのようにおこなわれるか、執行中に何が起こるか、死刑囚の死がどう発生するかなどについて、国民は知らされていない。政府は『死刑は80パーセント以上の日本人に支持されている』と言うが、なぜ、『知らない制度』について是非が言えるのだろうか」

また、プロジェクトチームの座長をつとめる金子武嗣弁護士は「弁護士会の立場は、死刑廃止でも存置でもない。死刑を執行停止して、みんなで議論しようと考えている。その前提として、日本人に今の死刑の現状を知ってもらいたい」と述べ、死刑制度の是非を議論するためには「実態を知ること」が重要という考えを強調した。

●「魔法の杖をもっているわけではない」

死刑制度の存廃をめぐっては、これまで国による世論調査が何度かおこなわれている。近年の結果では、死刑を容認する意見が80パーセントを超えている。こうした背景をふまえて会見では、記者から「なぜ日本人は、死刑を存置すべきだと考えている人が多いのか?」という質問があった。

プロジェクトチームで副座長をつとめる後藤貞人弁護士は「世論調査の方法にも問題があるが、多くの人が死刑の存置を支持しているのは確かだ。その大きな要因は、死刑によって何が起こるかということを知らされていないからだと考えている」と回答した。

そんな死刑容認の声が多い状況にどう対応していくのか。後藤弁護士は「われわれは魔法の杖をもっているわけではない。死刑の実態をできるだけ知らせることが課せられた義務であり、できることだ。それを全力をあげてやりたいと思っている」と話していた。

大阪弁護士会では今後、DVD「絞首刑を考える」日本語版の貸し出しや、市民集会やシンポジウムでの上映会を積極的におこなっていくという。

(弁護士ドットコムニュース)

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