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危険な「脱法ドラッグ」なぜ販売されているのか――「薬物規制」の現状と課題
「脱法ドラッグ」は、違法ドラッグに比べて害が少ないような印象を受ける

危険な「脱法ドラッグ」なぜ販売されているのか――「薬物規制」の現状と課題

「脱法ドラッグ」が原因とみられる交通事故が相次ぎ、あらためて、その危険性にスポットライトが当たっている。政府も7月8日に関係閣僚会議を開いて、対策に乗り出したという。

背景には、脱法ドラッグのまん延があるようだ。厚生労働省の研究班が今年2月に発表したデータによると、脱法ドラッグを使ったことがある人は、全国におよそ40万人もいると推計されている。

「脱法ドラッグ」「脱法ハーブ」といった名前からは、違法なドラッグと比べれば「まし」なのではないかという印象も受ける。しかし、国立精神・神経医療研究センターの和田清・薬物依存研究部長は、「脱法ドラッグは無限に近いほど種類があり、使用すれば何が起きるかわからない」「種類によっては、覚せい剤などの違法薬物よりも危険だ」と指摘する。

なぜこうした薬物は、「脱法ドラッグ」というあいまいな呼び名で、世に出回っているのだろうか。脱法ドラッグ問題にくわしい中村勉弁護士に聞いた。

●「脱法ドラッグ」に代わる呼び名を募集中

「脱法ドラッグは、以前から問題となっていましたが、特に2011年上半期から乱用され始めました。最近になって、池袋の暴走事件など、脱法ドラッグを吸引しての交通事故・事件が連続し、大きな社会問題となっています」

このように中村弁護士は指摘する。そもそも、なぜこうした薬物が「脱法ドラッグ」と呼ばれているのだろうか。

「名前の由来は、販売業者がこうした薬物を『合法ドラッグ』として売り込んだことにさかのぼります。一方、行政機関は、こうした有害な薬物を合法と呼ぶのは問題だとして、『脱法ドラッグ』と呼ぶようになり、一般にもこの名称が広まりました。

しかし、最近は『脱法ドラッグ』という呼び名も、あたかも法規制が及ばず、危険性も強くないような誤った印象を与えるとし、『違法ドラッグ』といった名称に変えるべきだという意見が強くなっています。厚生省は現在、『脱法ドラッグ』に代わる呼び名を公募しています」

●規制が厳しくなってはいるが・・・

それでは、こうした危険な薬物が、どうしていまも売られているのだろうか?

「『脱法ドラッグ』への規制は、しだいに厳しくなってきてはいます。

2013年3月には、一定の物質を含んだ薬品を一括して指定する『包括指定』が行われ、現在では1300種以上の『指定薬物』が規制対象となっています。

さらに、薬事法の改正によって2014年4月1日からは、指定薬物の輸入、製造、授与、販売などに加え、それまで摘発できなかった『使用』や『所持』も摘発対象にされました。

これを受けて警察でも、指定薬物を所持していたり、使用したという事案については、原則逮捕の方針で摘発に当たっています」

中村弁護士はこのように話していた。

ただ、脱法ドラッグは、次々と新たなものが生み出されるため規制が追いつかなかったり、鑑賞用として売られているため摘発がしにくいといった難点が指摘されている。現在、厚労省や警察などでは、販売業者の取り締まりを強化する方法が議論されているようだ。効果的な取り組みに期待したい。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

中村 勉
中村 勉(なかむら つとむ)弁護士 弁護士法人中村国際刑事法律事務所(代表弁護士)
愛知県弁護士会所属。元東京地検特捜部検事。中央大学法学部卒、Columbia Law School卒(フルブライト留学生)、LL.M.(法学修士号)取得。

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