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ボジョレ・ヌーボーの解禁日を守らずに販売したらどうなる?

ボジョレ・ヌーボーの解禁日を守らずに販売したらどうなる?

今年も例年どおり、11月の第3木曜日にボジョレ・ヌーボーが解禁になった。

ボジョレ・ヌーボーとは、フランスのボジョレ地区で作られる新酒ワインのことである。同じ品種のブドウを使って同じような作り方をしたワインでも、ボジョレ地区以外でできたワインをボジョレ・ヌーボーと呼んではいけないという決まりがあり、毎年「解禁日」が近づくとマスコミが当年の出来栄えを報じるなど、秋の風物詩になっている。

ところで、なぜボジョレ・ヌーボーには「解禁日」があるのだろうか。サントリーのホームページによると、「当初、解禁日は11月15日でしたが、この日が土日にあたるとワイン運搬業者がお休みになってしまうため、1985年より11月の第3木曜日に改定されました。早出し競争による品質低下を防ぐため解禁日は設けられました。なお、1984年11月15日が木曜日だったため、1984年に第3木曜日になったとする表記もありますが、法改正による変更は1985年からです」ということらしい。

しかし、人気のあるボジョレ・ヌーボーだけに、一日でも早く販売を開始したいというのが飲食店や販売業者の本音であろう。それでは仮に解禁日を守らず、常連客などを対象に業者側がこっそり販売した場合、違法性を問われることになるのだろうか。大和幸四郎弁護士に話を聞いた。

●解禁日を規制する日本法はないため、違法性はないと考えられる

「ボジョレ・ヌーボーの解禁日を規制する日本法はありません。サントリーが指している『法』とはフランス法のことでしょう。したがいまして、解禁日を守らず、ボジョレ・ヌーボーを販売しても、違法性はなく販売業者が処罰されることはないと思われます。」

「もっとも、ボジョレ・ヌーボーのような人気のある商品を販売する場合には、仕入れ元と販売業者の間に、『解禁日』より以前に販売しない旨の特約、ないし契約があると考えられます。」

「よって、この特約ないし契約を守らなかった販売業者は特約違反、契約違反を理由として債務不履行責任を問われることになるでしょう。」

「もちろん、このような特約や契約がない場合は、販売業者は債務不履行責任を問われないと思いますが、事実上来年以降は、仕入れ元からボジョレ・ヌーボーを仕入れることは困難になることが予測されます。」

●購入したお客が責任を問われることはない

「では、特約や契約がある場合、購入したお客が何らかの責任をとわれるのでしょうか。この点は、問われないと考えます。なぜなら、特約は仕入れ元と販売業者を規律するにとどまり、お客を拘束する訳ではないからです。」

「したがいまして、特約や契約がない場合は、なおさら購入したお客に責任を問われることはないと思われます。」

仮に解禁日を守らずにボジョレ・ヌーボーを販売しても、日本法では罰則されるわけではない。しかし大和弁護士が指摘しているように、翌年以降のことを考えると、販売業者によるルール違反は賢明とは言えなさそうだ。販売業者も購入するお客も「解禁日」という共通のルールを守り、当日を心待ちにすることで、より一層ボジョレ・ヌーボーの味わいも深いものになるのではないだろうか。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

大和 幸四郎
大和 幸四郎(やまと こうしろう)弁護士 武雄法律事務所
佐賀県弁護士会。2010年4月~2012年3月、佐賀県弁護士会・元消費者問題対策委員会委員長。元佐賀大学客員教授。法律研究者、人権活動家。借金問題、相続・刑事・男女問題など実績多数。

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