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東京都知事選後に生まれた「インターネッ党」――「政党」って、どうやって作るの?
「インターネッ党」のウェブサイトには<「新東京計画」始動>というキャッチコピーが掲げられている

東京都知事選後に生まれた「インターネッ党」――「政党」って、どうやって作るの?

2月におこなわれた東京都知事選挙で、最年少候補として立候補し、注目を集めたネット企業創業者の家入一真氏。5位で落選したが、選挙直後に新しい政治団体「インターネッ党」の立ち上げを表明し、話題になった。6月の中野区長選を始め、東京23区すべての区長選挙に候補者を擁立することを目指すという。

ところで、「政治団体」というと、自民党や民主党など国会議員を擁する「政党」が頭に浮かぶのではないだろうか。ほかにも、河村たかし名古屋市長が率いる「減税日本」のように地方議会で議席を持つ団体や、「インターネッ党」のような団体が数多くあり、政策実現のために活動をしている。

そんな政治団体や政党を作るためのルールは、どのようになっているのだろうか。また、政治団体と政党は、どこがどう違うのだろうか。元衆院議員で、政治問題に造詣の深い早川忠孝弁護士に話を聞いた。

●誰でも「政治団体」を作ることができる

「結社の自由を定めている今の憲法のもとでは、誰でも、政党や政治団体を作ることができます」

このように早川弁護士は大原則を述べつつ、「しかし」と言って、次のように続ける。

「届出された『政治団体(政党を含む)』以外の政治活動に対する寄付や支出は禁止されています。そのため、実際には、政治資金規正法に基づく届出をしないと、政治団体としての活動はできないことになります」

政治資金規正法上の「政治団体」になるには、どうすればいいのか。

「政治団体としての綱領や規約を定め、代表者や会計責任者を選任し、所在地を明記して、都道府県の選挙管理委員会(複数の都道府県に活動がまたがる場合は総務大臣)に届出をすることになります。

一見むずかしそうですが、書類さえ整っていれば、簡単に政治団体の設立ができます。ただ、このような簡易な手続きが、政治団体が乱立する要因の一つになっていると思われます」

では、「政治団体」と「政党」の違いは、どこにあるのだろう。

「政党法という法律が、特にあるわけではありません。政党は、政治団体の一つと考えられており、政党を設立するのに公的機関の認証や登記は必要ありません。

ただし、政党交付金による政党助成制度の対象となるためには、一定の要件をみたした法人格のある政治団体である必要があります。そのための法律として、政党助成法や政党法人格付与法があります」

●法人格のある政党になるためには「国会議員」が必要

政党交付金が受けられる「法人政党」となるためには、次のどちらかの要件をみたす政治団体でなければいけないという。

(1)国会議員(解散によって議席を失った前衆議院議員を含む)が5名以上いる

(2)国会議員を有し、かつ、直近の国政選挙で2%以上の得票をしている

「国会議員がいないと法人政党になれないのですから、ハードルが高いともいえます。

しかし、逆にいうと、国会議員が5名集まれば法人格のある政党が作れてしまうということですから、政党らしい組織や外観を備えていないペーパー政党や、一般党員のいない国会議員だけの政党なども出てきます。

これでは、政党とは名ばかりで、国会議員の同好会か、単なる政党交付金の受け皿ではないか、という批判が起きるのは自然なことです」

このように指摘する早川弁護士だが、家入氏の「インターネッ党」については、どのように見ているのだろう。

「今後、東京23区の区長選挙に候補者を立てていくと表明していることからすると、政治資金規正法に基づいて東京都選挙管理委員会に届出をする政治団体だということでしょうね。

しかし、さきほど述べたように、政治団体を作り、その届出をすること自体は簡単なことです。インターネッ党が本当に政治団体としての実態を備えていくのかどうかは、今後の活動しだいだといえるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

早川 忠孝
早川 忠孝(はやかわ ただたか)弁護士 太陽コスモ法律事務所
1968年司法試験・国家公務員試験合格、69年自治省入省。75年弁護士登録。03年東京弁護士会副会長。同年より09年まで衆議院議員。08年から09年まで法務大臣政務官。現在弁護士として「新しい選挙運動研究会」等を主宰。著書に『選挙の神様』(PHPパブリッシング)など。 弁護士早川忠孝の一念発起・日々新たなりー通称「早川学校」 (http://ameblo.jp/gusya-h/)

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