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ホテルのエアコンが故障して眠れない それでも「宿泊代」は払わなければならないか?
「暑い夏」が続いている

ホテルのエアコンが故障して眠れない それでも「宿泊代」は払わなければならないか?

気象庁の予報通り、「暑い夏」が続いている。節電には協力したいが、つらい夏を乗り切るにはエアコンが不可欠という人も多いだろう。

酷暑のさなかに困るのが、エアコンの故障だ。特に、旅先でエアコン故障に遭遇してしまうとどうにもならない。近代的なホテルでは窓を開けられないことも多い。そのうえ、夏休みの最混雑期なので代わりの空き部屋もなかなか見つからない。暑さで眠れぬ夜を過ごし、せっかくの旅行が台無しになったという話も聞く。

このように旅行先のホテルで、エアコンが故障した場合、正規の宿泊料金を払わなければならないのだろうか。それとも、苦痛を強いられた分だけ、安くしてもらえるのだろうか。ホテル・レジャー産業のトラブルにくわしい水嶋一途弁護士に聞いた。

●ホテルには債務を履行する義務がある

「ホテルなどの宿泊施設では、客が宿泊を申し込み、ホテル側が承諾すれば、『宿泊契約』を結んだことになります。

宿泊契約が成立すれば、宿泊日に、あらかじめ合意したグレード(広さ、設備、客室の等級など)の客室を利用させる義務が、ホテル側に生じます。

もし、客室のエアコンが故障していて、エアコンがなければ快適に客室を利用できないような状況なのであれば、ホテルはこの義務を適切に果たしているとはいえません」

――そうなれば、宿泊客は「ちゃんとした部屋に泊まらせろ」と要求できる?

「そうですね。ホテル側としてはこのような場合、(1)同等、またはよりグレードの高い客室を、同料金で提供する、という対応が、まず考えられます。

提供できる部屋がないなど、状況によっては(2)近隣のホテルから同等以上の客室を探して紹介し、差額はホテル側が負担する、ということもよくあります」

――夏休みなどの繁忙期で、近隣も含めてすべて満室という場合は?

「もし代わりの客室が見つからず、エアコンの故障した客室を利用せざるを得なくなり、暑さで眠れないなどの苦痛を強いられた場合には、ホテル側は義務を果たしていないことになります。

このような状態を『宿泊契約の債務不履行』といい、宿泊客はホテルに対して損害賠償を求めることができます。

具体的には、宿泊代の全部または一部を減額して解決することになります。金額は、宿泊客が受けた苦痛の程度によって決まります」

確かにエアコンは、故障していても全く支障のない時期もあるだろう。そう思いつつ、ふと気温をみると37度……。こんな猛暑日は、エアコンが壊れた部屋に足を踏み入れること自体、拒否したくなるかもしれない。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

水嶋 一途
水嶋 一途(みずしま かずみち)弁護士 一途総合法律事務所
一途総合法律事務所 代表弁護士。ゼネコン勤務(人事担当)を経て弁護士に転身。上場企業や中小・ベンチャー企業の法務や事業再生案件を数多く手がけるほか、離婚、相続など個人の身近な相談も積極的に取り扱う。

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