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強制的に「不妊手術」させられたーー60代女性が訴える「旧優生保護法」の問題とは?
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強制的に「不妊手術」させられたーー60代女性が訴える「旧優生保護法」の問題とは?

10代のときに「旧優生保護法」に基づいて、強制的に不妊手術を受けさせられたとして、宮城県の女性(69)が6月下旬、日本弁護士連合会に人権救済を申し立てた。

報道によると、女性は知的障害があったが、16歳のころ、住み込みで家事手伝いをしていた。その当時(1963年)、職親(知的障害者の生活・職業指導を引き受ける人)によって、何も知らされないまま県の診療所に連れて行かれた。そこでは、卵管をしばって妊娠できなくする手術を受けさせられたのだという。

手術の根拠となったのが、旧優生保護法だったという。女性は、国が定めた法律によって「自己決定権、幸福追求権が侵害された」として、補償を含む適切な処置を国に勧告するよう、日弁連に求めている。今回の人権救済の申立の背景について、女性の代理人をつとめる新里宏二弁護士に聞いた。

●手術数は1万6500件にも及ぶ?

そもそも「旧優生保護法」は、どんな法律なのだろうか。

「旧優生保護法は、1948年に制定された法律です。その目的として『優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する』(同法第1条)と定められていました。

そのために、知的障害などの精神障害を理由として、本人の同意なく、医師の申請と都道府県優生保護審査会の審査に基づく優生手術が長年にわたって、おこなわれてきました。その手術数は、約1万6500件にも及ぶといわれています。

まさに、『不良な子孫』という文言で人間を差別化して、子供を生み育てるという、人として基本的な権利を失わせることを合法化していたのです」

●いまも被害が放置されている

今回人権救済を求めた女性は、どのようなことを求めているのか。

「この女性は、本人が16歳のときに、知的障害を理由として、優生手術と知らされないまま、手術されたのでした。

その後、何度か結婚しても、子どもができないという理由から、破綻してしまいました。本人は、理不尽な手術を知らされないままに受けさせられたことについて、国に謝罪と補償を求めています」

今後の人権救済の展開は、どのようなものになるのだろうか。

「女性本人の希望に沿って、国への勧告がなされることを期待しています。

先日は院内学習会も開催されました。国会議員にも、この問題に強い関心と怒りを持っていただきました。

戦後の日本で、本来あってはならないことが起こり、いまも被害が放置されています。同様な制度を持っていたドイツとスウェーデンでは、すでに補償がなされています。国会でも真摯(しんし)な議論がおこなわれ、被害救済の制度ができることを期待しています」

新里弁護士はこのように訴えていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

新里 宏二
新里 宏二(にいさと こうじ)弁護士 新里・鈴木法律事務所
1952年岩手県盛岡市生まれ。中央大学法学部卒業、1983年仙台弁護士会登録、多重債務問題等に取組み、2010年度仙台弁護士会会長、翌年度日弁連副会長、震災対策に取組み、現在ブラック企業対策全国弁護団副代表等。

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