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タイ中心部で「爆弾テロ事件」発生・・・被害者は「賠償」を受けることができるのか?
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タイ中心部で「爆弾テロ事件」発生・・・被害者は「賠償」を受けることができるのか?

タイの首都バンコクの中心部で8月中旬、爆発事件が発生し、中国人やフィリピン人など20人が死亡した。現地駐在の日本人男性1人を含め、120人以上がケガをする惨事となった。

現地の捜査当局は、仕掛けられた爆弾が爆発したとして「テロ事件」と判断。在タイ日本大使館は「今後も不測の事態が発生する可能性も排除できない」として、現地の日本人に注意を呼びかけている。

日本人が海外でテロ事件に巻き込まれることは、過去にも起きている。駐在や旅行をしているときにテロに遭遇して、死亡したり、ケガをした場合、賠償を受けることはできるのだろうか。澤井康生弁護士に聞いた。

●テロを起こした団体に損害賠償請求するのは「非現実的」

「テロによって、死亡やケガをした場合、理論的には、テロを起こした団体に対して、治療費や、死亡による損害、後遺障害による損害などを含めて、損害賠償請求をすることは可能です。

しかし、海外の、しかもテロを起こすような団体だと、相手を特定することは困難です。また、はたして賠償能力があるかどうか、賠償交渉に応じるかどうかもわかりません。

このようなことを考えると、テロを起こした団体に対して、損害賠償を請求するのは現実的ではありません」

澤井弁護士はこのように述べる。被害者は泣き寝入りしかないのだろうか。

「そのような場合に備えて、海外旅行保険に加入しておくことが考えられます。

ただし、一般に、海外旅行保険は約款で『免責条項』が定められています。事前に、テロが免責条項に該当しないことを確認しておく必要があります。

ちなみに免責条項とは、特定の事項により発生した損害について、保険会社は保険金支払義務を負わない旨を規定したものです」

●「戦争」は免責条項に引っかかるが・・・

一般的に、テロは免責条項に該当するのだろうか。

「各保険会社の海外旅行保険において定められている免責条項では、『戦争』『外国の武力行使』『革命』『内乱・武装反乱』などが列挙されています。これらは、いわゆる『戦争危険』として免責される旨が定められています。

一方、警察庁組織令によると、テロは『広く恐怖または不安を抱かせることによりその目的を達成することを意図して行われる政治上その他の主義主張に基づく暴力主義的破壊活動』と定義されています(警察庁組織令第39条4項)。

また、ある大手保険会社のホームページでは、『政治的、社会的、宗教的もしくは思想的な主義もしくは主張を有する団体もしくは個人またはこれと連帯するものがその主義または主張に関して行う暴力的行動』とされています。

つまり、『戦争危険』には該当しないとされていますので、海外でテロの被害にあった場合、海外旅行保険により損害を補償してもらうことが可能です。

ただし、保険会社によっては、約款が異なる場合もあります。加入するときにテロによる被害も補償してもらえるか否か、確認することが必要です」

澤井弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

澤井 康生
澤井 康生(さわい やすお)弁護士 秋法律事務所
警察官僚出身で警視庁刑事としての経験も有する。ファイナンスMBAを取得し、企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士試験や金融コンプライアンスオフィサー1級試験にも合格、企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。陸上自衛隊予備自衛官(3等陸佐、少佐相当官)の資格も有する。現在、早稲田大学法学研究科博士後期課程在学中(刑事法専攻)。朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。楽天証券ウェブサイト「トウシル」連載。毎月ラジオNIKKEIにもゲスト出演中。新宿区西早稲田の秋法律事務所のパートナー弁護士。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。

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