ブランドのロゴマークに代表される「商標」は、企業などが商品やサービスを提供するときに、競合他社との違いを強調するために使う標識のことだ。文字や図形などが一般的だが、これまで日本の法律では「音」や「色そのもの」は商標として登録できなかった。
ところが報道によると、特許庁は、今年の通常国会で法律を改正し、パソコンを起動するときに流れるメロディーなどの「音楽」や、商品のイメージをあらわす「色彩そのもの」についても、新たに商標として登録できるようにする方針だという。
音や色が商標として登録できるようになることで、企業にはどんなメリットが生じるのだろうか。逆に、それによるデメリットや課題はないのだろうか。商標にくわしい南部朋子弁護士に聞いた。
●欧米などではすでに認められている
「音や輪郭のない色彩(以下単に『色彩』といいます)の商標登録が認められれば、企業には、商標登録した音や色彩を自社の商品やサービスを示すものとして独占的に利用できる、というメリットがあります。
特に、音や色彩の商標は、文字商標と比べると、使用言語が異なる人にも認識されやすいのではないかと思われます」
こうした商標は、他の国でも認められているのだろうか?
「米国、欧州、韓国および台湾では、すでに音や色彩の商標登録が認められています。たとえば、日本では貼り薬『サロンパス』で有名な久光製薬株式会社は、米国で音の商標(ヒ♪サ♪ミ♪ツ♪)を登録済みです(商標登録番号2814082)。
この音の商標は、米国特許商標庁のウェブサイト(http://www.uspto.gov/trademarks/soundmarks/ )で聞くことができます。
外国で音や色彩の商標を活用している企業にとってみれば、日本でも商標登録が認められることで、商標権という強力な権利で守られることになり、世界的なブランド戦略がより容易になるというメリットがあるものと考えられます」
●宣伝の音や色について「細心の注意」が必要になる
いま取りざたされているルール変更は、日本のルールを国際的な潮流に合わせる、という側面もあるのだろう。一方で、この変更に伴うデメリットはないのだろうか? 南部弁護士は次のように指摘していた。
「改正法の内容にもよりますが、各企業は、他社が商標登録した音や色彩、およびこれに似た音や色彩を使わないように細心の注意を払わなければならなくなります。
音や色彩が同じなのか、似ているのか。判断はそう簡単ではありませんので、企業の宣伝活動が商標権侵害になるかどうか、裁判で争われるケースが増えるかもしれません」