「ファンからのプレゼントに盗聴器が仕掛けられていた」——。アイドル公演やグッズ販売などを手がけている「AKIBA ON STAGE」がツイッターでそう発表し、話題を呼んでいる。
6月中旬、公式ツイッターで「頂いたプレゼントの中に盗聴器が仕込まれておりました。現在調査中でございます」と投稿した。どんなものが、何に仕込まれていたのか、詳細は不明だが、今後は「機械類のプレゼント」は受け取れないとした。なお、ツイートはその後削除された模様だ。
盗聴器入りのプレゼントなど、贈られた側にしてみれば「絶対にお断り!」だろう。ツイッターでも「本当にひどい話だ」といった声があがっている。漫画やアニメなどでは、アイドルに贈られたぬいぐるみの中に盗聴器が仕込まれていたというネタが出てくるが、はたして贈り物に盗聴器を仕込むという行為は、犯罪になるのだろうか。服部啓一郎弁護士に聞いた。
●盗聴そのものを禁止する法律は日本にはないが・・・・
「日本には、盗聴行為そのものを禁止する法律はありません」
服部弁護士はこう切り出した。では、日本は盗聴し放題の「盗聴天国」ということなのだろうか。
「そうではありません」と服部弁護士は切り返す。
「罪に問われる可能性はあります。たとえば、プレゼントの中に盗聴器を仕掛けるという行為は、無線通信にあたります。したがって、電波の周波数や電界強度によっては、『電波法』違反になるでしょう(同法110条1号、1年以下の懲役または100万円以下の罰金)。
また、次のようなケースも考えられます。ファンから贈られたプレゼントが劇場公演日にアイドルの手にわたるとして、その前後に楽屋などで保管されているとしましょう。
そうすると、公演の打ち合わせや業務上のやりとりが盗聴されることもありえます。このようなやりとりは、可能性は低いものの、場合によってはアイドルグループの営業秘密に該当します。営業秘密を侵害した場合は、『不正競争防止法』違反に問われる可能性もあるでしょう(同法21条1号、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金)」
つまり、「盗聴する」という行為そのものが法律で禁止されているわけではないが、状況によっては、さまざまな法律で違法になる場合があるということだ。
●ストーカー規制法違反で摘発される可能性も
あまり知られていない法律が出てきたが、一般人の感覚からすれば、盗聴器を仕掛けられたとすれば、非常に気持ち悪いものだ。まして、アイドルはその日の公演にやってきたファンの中に、仕掛けた張本人がいるかもしれないと不安になるはず。人によっては、公演でのパフォーマンスに支障をきたすかもしれない。
「その通りだと思います。盗聴器を仕掛けられること自体、アイドルにとって、強い恐怖を与える行為でしょう。したがって、同様の行為が繰り返されることがあれば、『偽計業務妨害罪』または『威力業務妨害罪』が成立すると考えられます(刑法233条、234条、3年以下の懲役または50万円以下の罰金)。
また、相手の行動を監視していると思わせるような状態にすることを繰り返したということで、ストーカー規制法違反で摘発される可能性もあります(13条、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金)」
このように説明したうえで、服部弁護士は、「ネット上に『盗聴は犯罪にならない』という情報が出回っている」と触れる。そして、「今後、同様の事例が多発すれば検挙される人が出てくるかもしれません。安易に考えて、盗聴することは絶対にしてはいけません」と警鐘を鳴らしていた。