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トヨタ女性役員逮捕で激震ーー麻薬「オキシコドン」輸入の仕組みとは?
トヨタ自動車・豊田章男社長が6月19日夕に開いた記者会見の模様は「ニコニコ生放送」でも中継された。

トヨタ女性役員逮捕で激震ーー麻薬「オキシコドン」輸入の仕組みとは?

トヨタ自動車のジュリー・ハンプ常務役員(55)が6月18日、麻薬取締法違反(輸入)の容疑で警視庁に逮捕された。翌19日には、豊田章男社長が記者会見を開き、「世間をお騒がせすることになり、誠に申し訳なく思っております」と陳謝した。

報道によると、ハンプ常務役員は6月11日、麻薬成分の「オキシコドン」を含む錠剤57錠をアメリカから密輸した疑い。東京税関が、アメリカから成田空港に届いたハンプ常務役員宛の国際郵便小包を調べ、錠剤を発見したという。ハンプ氏は「麻薬を輸入したとは思ってない」と容疑を否認しているという。

米麻薬取締局によると、オキシコドンは、アメリカでは規制物質法という法律で規制されている麻薬性鎮痛薬。がんなどの痛みを和らげる目的で医療用に処方されているが、多幸感とリラックス効果があるため乱用される危険性が高く、歴史的に麻薬乱用者たちに人気のある薬となっているという。「ヒルビリー・ヘロイン」という別名もあるそうだ。

●「オキシコドン」は国際条約に定められた麻薬

オキシコドンは、日本ではどのような扱いをされているのだろうか?

厚労省医薬食品局の監視指導・麻薬対策課によると、オキシコドンは、国際条約(麻薬単一条約)に定められた麻薬で、日本でも厳しく規制されているという。この条約には、コカインやヘロイン、モルヒネなど、100以上の物質が列挙されているという。

オキシコドンは、日本でも「医療用麻薬」として用いられている。医療用麻薬というのは、その名の通り、病気の治療用に使われる薬物だ。

一口に麻薬といっても、「ヘロイン」のように人体に極めて強い悪影響があり何の用途にも使えないものもあれば、「モルヒネ」のように適切にコントロールをすれば痛みの緩和などの医療に利用できるものもある。後者のような薬品は「医療用麻薬」として、医師の処方など一定の条件のもとに、国が使用を許可するケースがあるのだ。

●無免許だと「密輸」になってしまう

報道によると、警視庁は量からして「個人用」とみているようだが、個人的に利用するための医療用麻薬であっても、海外から日本に持ち込むことはできないのだろうか?

同課によると、「麻薬」は医療用麻薬も含めて、厚労大臣の許可を受けた業者でなければ、輸出入ができないと「麻薬及び向精神薬取締法」で定められている。「免許を持っている業者以外が輸入すると『密輸』になってしまう」(同課)のだ。

一方で、このルールには医療用麻薬の携帯輸出入制度という「例外」がある。この制度を通じて、地方厚生局長の許可を事前に得ておけば、医療用麻薬を「合法的に」持ち込むことが可能だという。

厚労省地方厚生局の資料によると、この制度は「特定の患者が、自分の病気の治療のために、医療用麻薬を携帯せざるを得ない場合に輸出入を認めるもの」だという。

具体的な手続としては、病名や処方量などを記した「医師の診断書」と申請書を、入国日の2週間前までに提出する必要があるとされている。

●個人で持ち込む例外措置もあるが「郵送はダメ」

ただし、許可を得たとしても、輸入が許されるのはあくまで「本人が入国する際に携帯する」場合に限られる。仮に許可を受けても、麻薬を郵便で輸出入したり、知人に託したりすることはできないという。

豊田社長は記者会見で「ハンプ氏は私にとってもトヨタにとってもかけがえのない大切な仲間でございます。いまは、仲間を信じて、当局の捜査に全面的に協力することだと思っています。捜査を通じて、ジュリー・ハンプ氏が法を犯す意図がなかったということが明らかにされると信じています」と話した。


今後はいったいどのような経緯で、日本にいるハンプ氏にオキシコドンが送られようとしていたのか、その詳しい経緯に注目が集まりそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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