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隣は「ゴミ屋敷」山積みの犬の糞やカセットコンロ・・・なんとか撤去できないか?
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隣は「ゴミ屋敷」山積みの犬の糞やカセットコンロ・・・なんとか撤去できないか?

隣家の住民が敷地内に、生ゴミ・不燃ゴミ・動物の糞を集めて山にしていて、ひどい異臭がする。何か対策として考えられることはないかーー。こんな相談が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。

隣人は、生ゴミ・不燃ゴミ・動物の糞を集めて山積みにしており、夏が近づくにつれ、異臭が漂ってきたという。特にひどいのは、5匹以上飼っていると思われる犬の糞。異臭を漂わせるだけでなく、雨が降れば敷地から漏れ出し、公道や側溝にも流れてくる始末だ・・・。

また、不燃ゴミの中身は卓上コンロ用のカセットボンベが大半だとみられる。ゴミ袋に入ったまま何百本もの使用済みボンベが山積みになっている隣家に対して、相談者は「ガス抜き等していないようなので、これからの気温上昇に向けてとても心配です」と記す。

隣人に苦情を申し立てても、対応してくれないため、鼻をつまんでいるしかない状況だ。こんな場合、ゴミを撤去してもらうには、法的にどんな対処が考えられるだろうか。ゴミ問題にくわしい藤田城治弁護士に聞いた。

●ゴミであっても隣人の「財物」

「第三者からみて、明らかに『ゴミ』であったとしても、法的には、隣家の住民に『所有権』がある『財物』となります。『財物』かどうかの判断をする際には、その物に客観的な価値があるかは問われません」

藤田弁護士はこのように説明する。つまり、隣家を勝手に掃除してしまったら問題になるのだろうか。

「第三者にとっては『ゴミ』であっても、勝手に処分したり、隣家の敷地に無断で立ち入った場合には、相談者側が法的な責任を追及される恐れがあり、注意が必要です。隣人の『財物』である以上、撤去を求めても応じてくれない場合は、きちんとした手続を踏む必要があります」

具体的には、どのような手続きを踏めばいいのだろうか。

「まず、自分自身で対応する場合には、裁判所の民事調停のほか、都道府県で実施している『公害審査会』での調停・あっせんを利用することが可能です。公害審査会は、市区町村の公害苦情相談窓口へ苦情申立をすることから始まります。そのほか、悪臭を理由にした損害賠償請求をすることも考えられるでしょう。

また、ご相談者が自宅の土地・建物の所有者である場合、所有権に基づく『妨害の予防』を求める訴えによって、不燃物(カセットボンベ)の撤去を求めることも考えられます。隣家が火災を起こすことによって、土地・建物の所有権が『妨害』されることを予防するための請求です。

一方、悪臭については、単に『臭い』というだけではなく、受忍限度を超える必要がありますし、隣家の『ゴミ』によって危険が及ぶことの証明が必要で、なかなかハードルが高いです。

勝訴した場合には、業者に依頼して『ゴミ』を撤去し、その費用を隣家に請求する方法もあります。しかし、『ゴミ屋敷』の所有者の場合、なかなか、お金を払えない可能性もあるでしょう」

●ゴミが撤去された後にも問題が・・・

では、どのように進めるのがよいのだろうか。

「現実的な選択肢としては、行政に対応を求めることでしょう。窓口は先ほど述べた市区町村の公害苦情相談です。しかし、行政が行うにせよ、『所有権』の問題があります。持ち主に対して、自発的に撤去するよう説得することから始めることになります。

隣人が撤去に応じない場合ですが、過去には、道路にあふれ出たことを理由に『道交法違反』で逮捕した例があります。また、最近は、各自治体でゴミを強制的に撤去する手続を定めた条例が作られていますから、その活用が注目されるでしょう」

藤田弁護士は最後にこう指摘した。

「『ゴミ屋敷』問題の難しいところは、法的な手続によって、ゴミが撤去されたとしても、家主の心のケアや生活状況の見直しをしないと、再び繰り返されてしまうところです。民間の福祉団体と市が連携して、家主のケアも含めたゴミの片付けを実施している例もあり、こういった動きが広まることが期待されます」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

藤田 城治
藤田 城治(ふじた じょうじ)弁護士 森の風法律事務所
第二東京弁護士会・環境保全委員会、関東弁護士会連合会・環境保全委員会委員 個人・企業を対象とした各種民事・刑事事件を扱っているほか、事務所の弁護士各自が野生動物・自然環境の保護にも取り組み、イリオモテヤマネコ等の保護活動を行っている認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金(http://www.jtef.jp/)をサポートしている。

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