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「名前を変えずに結婚したい!」夫婦別姓を求めて「ネット署名」始めた女性たちに聞く
ネット署名活動を始めた田中茜さん(左)、小路雅代さん(中央)、岡村紘子さん(右)

「名前を変えずに結婚したい!」夫婦別姓を求めて「ネット署名」始めた女性たちに聞く

名前を変えずに結婚したい——という署名キャンペーンが、ネット上で始まった。7月29日現在で約12000人の賛同が集まっている。いま最高裁で審理されている訴訟では、大法廷での弁論が11月4日に開かれ、夫婦同姓を定めた民法750条のルールが憲法違反かどうかの判断が行われるとみられている。

署名を募るサイトには次のような言葉が記されている。

「(結婚後)慣れ親しんできた自分の名前を使い続けたくても、パスポートや免許証、保険証やクレジットカードなど、ほとんどの重要書類上で旧姓を維持することはできません。徐々に徐々に、前の自分の存在が薄れていくことを、静かに受け入れる他ないのです。それを受け入れたくない、共に姓を変えたくないカップルは、現在、法的な結婚をすることができません」

そのうえで、「同姓になりたい」「別姓がいい」という、それぞれの意思を尊重できる「選択的夫婦別姓制度」を求める声を、最高裁に届けようと呼びかけている。

インターネット署名サイトchange.orgで「名前を変えずに結婚したい!〜LOVE MY NAME ♡ 選択的夫婦別姓制度の実現を〜」というキャンペーンを始めた3人の女性たちに、署名活動を始めたきっかけや、制度を求める理由を聞いた。

●【小路雅代さん(43)元会社員】

私の場合、子どものころから姓で呼ばれることが多かったのと、自分が長女で、男兄弟がいないため、昔から姓を変えることに抵抗がありました。

もし20代で結婚していたら、不本意ながら、変えていたかもしれません。ただ、その後、20代、30代と仕事をしていくなか、世の中が男性社会であるということを意識せざるを得ず、「平等だった子ども時代から、なぜこうなるのか?」とよく考えました。結婚すると男性の姓になるのが当たり前という慣習も、その原因の一つだと思います。

当事者としては、結婚したい相手がいるのですが、名前を変えたくないので、籍はいれていません。ただ、事実婚というのも定義がなく、いくら本人同士の意思で結ばれていても、何か緊急事態があったときなど、夫婦とは認識されません。今後、彼の仕事も手伝っていきたいのですが、いつまでも「彼女」ではやりづらいですし、どうしようかと考えていました。

そんななか、最高裁が夫婦別姓について判断するというニュースを知りました。「ただ待っているだけじゃなくて、何かしなきゃ」と思い、署名サイトchange.orgのワークショップに参加したことをきっかけに、3人で署名を立ち上げました。

●【岡村紘子さん(30)会社員】

私は、伊藤という旧姓に強い思い入れがありませんでした。それで、結婚したとき「伊藤」から「岡村」になりました。手続が面倒でしたが、特に自分が「困った」ということはありません。

ただ、その自分ですら、名前が変わったことに、喪失感がありました。

結婚した友人のなかにも、姓を変えるのがいやだったという人はたくさんいます。結婚して、子どもが生まれて、時間が経つごとに旧姓の部分が浸食されていって、「アイデンティティが傷つけられた」と感じたという話も聞きました。

一方で、「選択的夫婦別姓ができるようになるまで、何年も結婚するのを待っている」とか、「別姓を貫きたくて事実婚を選んだ」という人も身近にいます。

あるカップルは、子どもが生まれたときに「非嫡出子にしたくない」と考えて、役所に行ってまず婚姻届を出し、その後に出生届を出して、最後に離婚届を出してから帰ってきたそうです。

その話を聞いて、そこまでするんだ、と思いました。

事実婚だと、子どものことが大変だと聞きます。たとえば事実婚の両親には共同親権が認められないので、子どもの親権を父母どちらかが単独で持つことになります。

私がキャンペーンを始めたのは、周囲のそんな話に加えて、男だからこう、女だからこう、という固定観念がいやだったということもあります。

結婚のときにも、女が名前を変えるのが当たり前という風潮がありますよね。同窓会で学校の先生とかに「女子はね、そのうち名字が変わるんだから」と悪気もなく言われたりとか・・・。

選択的夫婦別姓が認められて、そういう価値観が変わってくればと思います。

●【田中茜さん(28)フリーランス】

両親が国際結婚で、母は田中、父はシュナイダーと名乗っています。そのため「夫婦別姓で当然」という環境で育ちました。

思春期のころ、親が実印をプレゼントしてくれたとき、兄と弟は立派なハンコだったのに、「結婚したら姓が変わるから」と私のものだけ差が付けられていた、ということがありました。このような経験から、夫婦の姓について関心を持つようになりました。

その後、私自身が実際に社会進出をしていく過程において、過去に感じた姓についての疑問が現実問題として実感できるようになってきました。

少子高齢化社会が進み、働く人口がどんどん少なくなるなか、女性の社会進出が大々的にうたわれています。

社会進出を果たすには自分というブランドを売り込む必要があるにも関わらず、「結婚で姓が変わる」ことにより、それまで築き上げたものを捨て、再出発しなければならないという問題があります。

過去の夫婦像として、夫が社会に出て働き、妻が家庭を支えるという構図が多数派を占めており、それに影響される形で夫の姓を名乗る夫婦が多数派を占めていました。

現在においては、共働きや専業主夫など家庭内の構図が多様化しており、だからこそ、民法の側も、現在の実情に合わせた選択的夫婦別姓への変化が必要だと感じます。

「多様性を認める世の中」に早急になってほしい、そんな風に早く変えていかなければいけないと考えて、このキャンペーンを立ち上げました。

署名サイトはこちら(https://www.change.org/p/名前を変えずに結婚したい-love-my-name-選択的夫婦別姓制度の実現を

(了)

(弁護士ドットコムニュース)

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