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「金子勇さんの無念を忘れてはならない」 Winny事件・桂充弘弁護団長の追悼文
2011年12月、無罪確定後に記者会見したときの金子勇さん

「金子勇さんの無念を忘れてはならない」 Winny事件・桂充弘弁護団長の追悼文

ファイル共有ソフト「Winny」の開発者である金子勇さんが7月6日、急性心筋梗塞で死去した。42歳。ネットではその早すぎる死を惜しむ声が沸き起こっているが、ここでは、金子さんと深い関わりのあった弁護士の追悼の言葉を紹介したい。

金子さんは卓越したソフトウェアの開発力によって高く評価されたが、2004年5月、Winnyの開発をめぐり著作権法違反幇助の疑いで逮捕された。一審の京都地裁で有罪判決を受けたが、二審の大阪高裁は逆転無罪の判決。2011年12月に最高裁が検察の上告を棄却し、無罪が確定した。

その無罪判決を勝ち取った弁護団の団長をつとめた桂充弘弁護士に、追悼文を寄稿してもらった。その全文を、以下に掲載する。

●Winny事件の弁護団長・桂充弘弁護士の追悼文

「Winnyの作者、金子勇さんが、42歳の若さで亡くなられた。慙愧に堪えない。

金子さんは、欲得とは無縁の、正に天才プログラマーでした。恥ずかしそうな伏し目がちの笑顔が印象的でした。

構成要件の曖昧な「幇助」での逮捕・起訴は、金子さんだけでなく、プログラマー全体に与えた萎縮効果が大きく、日本のプログラム開発は大きく出遅れてしまいました。日本の産業政策上も大きな汚点です。同様のシステムを利用しているSkypeなどの隆盛を見ても、金子さんの不当逮捕・不当起訴が大きな誤りだった事は、無罪判決を持ち出すまでもなく明らかです。

人生の中でもっとも技術者として充実していたはずの7年間、刑事裁判という後ろ向きの活動を強いられ、そしてその肉体までも蝕ばまれてしまった。捜査機関の責任は重大です。司法に係る者の一員として、捜査機関の「おごり」「誤り」を許すことができません。

失われた7年間を取り戻すべく本格的な活動を再開されたはずなのに、最高裁での無罪確定から僅か1年半で帰らぬ人となってしまった金子さん。金子さんの無念を忘れてはなりません。

Winny事件を、そして金子さんを忘れ去らせることなく、司法に係る全ての人が刑事司法を見直し、技術者の活躍できる国に変わることを心より願うものです。

弁護士 桂充弘」

(弁護士ドットコムニュース)

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