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なぜ未成年は選挙運動メッセージを「リツイート」してはダメなのか?
未成年がリツイートすると違法になってしまう「選挙運動メッセージ」とは?

なぜ未成年は選挙運動メッセージを「リツイート」してはダメなのか?

「リツイート、ダメですよ」――。ネット選挙解禁を受けて、総務省が未成年向けに作ったチラシのキャッチフレーズに、ネットユーザーが沸いている。公職選挙法で、未成年は選挙運動が禁じられているが、それはネット上でも同じだ。それを周知徹底しようというわけだが、ネットでは「なんでダメなんだ?」「なかなかの無茶をおっしゃる」と批判的な意見が数多くあがっている。

リツイート(RT)とは、ソーシャルメディアの「ツイッター」で、他人のツイート(つぶやき)をそのまま「再投稿」することだが、感覚としては「転送」に近い。また、自らの言葉でメッセージを書き込むのと違い、1クリックで簡単にできてしまうため、「そのメッセージを多くの人に伝達している」という意識が薄い場合も少なくないだろう。

それなのに、未成年が誰かの選挙運動メッセージをリツイートするのは、なぜ違法になってしまうのか。また、未成年がリツイートすると違法になってしまう「選挙運動メッセージ」とは、具体的にどのようなものだろうか。衆議院議員としての経験もあり、選挙の実態を熟知する早川忠孝弁護士に聞いた。

●候補者の「おはよう」ツイートも、選挙期間中は「選挙メッセージ」になる

「まず前提として、未成年は選挙運動ができません。また、未成年に選挙運動をさせることも禁止されています(公職選挙法137条の2)」

——リツイートはなぜダメなのか?

「候補者の『選挙運動メッセージ』は、選挙用の文書図画にあたります。ツイートはこの文書図画に含まれます。リツイートは『文書図画の頒布』にあたり、選挙運動とみなされます。

かみくだいていうと、リツイートは、候補者が選挙メッセージをまくのを手伝っているのと同じということですね」

——「選挙運動メッセージ」になるツイートとは、具体的にはどんなもの?

「選挙運動は大まかにいうと、特定の選挙で、特定の候補を有利にするための活動です。未成年者が政治や選挙について語ることは自由です。特定の候補者の応援を目的としないツイートを1回した程度で、違反だと判断されることはまず考えられません。

ただ、主観的には応援の目的がなくても、客観的に判断して、特定の候補者の当選目的だとみなされるようなツイートをなんども反復継続して行えば、選挙運動にあたるとされる可能性はあります」

——候補者のツイートはどういう扱い?

「選挙期間中、候補者のツイートは、基本的に選挙運動メッセージになると考えていいと思います。たとえば、『おはようございます』のようなあいさつも、選挙期間中に限っては選挙運動の意味を持つと考えられます。

ツイートが選挙運動にあたるかどうかは、ツイートの内容やツイートに至った動機、ツイートの態様などを総合判断することになるからです。候補者は自分を有利にするため、人生をかけて発言していますからね」

つまり、候補者による「おはようございます」というツイートを、未成年が選挙中にリツイートしたら、それは選挙メッセージの頒布と受け取られて、公選法違反になる可能性があるということだ。

選挙を盛り上げるためには、未成年も含め、幅広い人に関心を持ってもらいたいと思うが、現在の法律では、そういうことになってしまうのだろう。ただ、そうなると、未成年がリツイートしただけで法律違反になってしまうような、現在の公職選挙法にこそ、問題があるといえないだろうか。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

早川 忠孝
早川 忠孝(はやかわ ただたか)弁護士 太陽コスモ法律事務所
1968年司法試験・国家公務員試験合格、69年自治省入省。75年弁護士登録。03年東京弁護士会副会長。同年より09年まで衆議院議員。08年から09年まで法務大臣政務官。現在弁護士として「新しい選挙運動研究会」等を主宰。著書に『選挙の神様』(PHPパブリッシング)など。 弁護士早川忠孝の一念発起・日々新たなりー通称「早川学校」 (http://ameblo.jp/gusya-h/)

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