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小犬にほえられて階段から転落、飼い主に治療費を請求できる?【小町の法律相談】
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小犬にほえられて階段から転落、飼い主に治療費を請求できる?【小町の法律相談】

外出中に犬に突然ほえられると、びっくりしてしまいます。もし、転んでけがを負った場合、飼い主に治療費を請求することはできるのでしょうか。YOMIURI ONLINEの掲示板「発言小町」に寄せられた質問について、鈴木智洋弁護士に聞きました。

<寄せられた質問>

先日、祖母が外出のため、アパートの階段を下りようとした時のこと。同じアパートの住人のAさんがちょうど階段を上がってきたそうです。Aさんは小犬を抱きかかえており、祖母とすれ違う際、その小犬が突然、祖母に向かってほえたのです。驚いた祖母は、階段から足を踏み外し、階下に転落してしまいました。

倒れたまま痛がる祖母に、Aさんは「大丈夫ですか?」と声をかけたものの、祖母が「大丈夫です」と答えると、そのまま自分の部屋に戻っていったそうです。その後、祖母は病院に行き、右腕の骨折や打撲などのけがをしていることがわかりました。

いくら大丈夫と言われたからといって、祖母を助けようともせずに部屋に戻ったAさんを腹立たしく思います。Aさんに治療費や慰謝料などを請求することは可能でしょうか?

(この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部が再構成したものです)

<鈴木智洋弁護士の回答>

「飼い主がどの程度注意していたのかによります」

民法では、動物の占有者は、第三者に与えた損害を賠償しなければならないとされています。ですから、ペットが第三者にかみついたり、吠えかかったりしてけがをさせてしまった場合、Aさんが責任を負う可能性はあります。

ただし、民法では、動物の占有者は動物の種類、性質にしたがって相当な注意を払っていれば、責任を負わないとされています。今回の相談例でも、Aさんが飼っていたのは子犬のようですし、普段からあまり吠えないとか、すれ違う際に吠えないように子犬の顔を押さえていたなどの事情があれば、Aさんが責任を負わない可能性もあります。

なお、Aさんがその場を立ち去ったことについては、腹立たしく思う気持ちは理解できますが、Aさんがその場を立ち去ったことによって、あなたの祖母が骨折や打撲をしたというわけではありませんので、立ち去ったこと自体は不法行為とならないでしょう。せいぜい、慰謝料の額を検討する際の一事情ということになると思います。

Aさんが責任を負う場合に支払う損害賠償の範囲についても触れておきます。治療費は当然ですが、病院への通院費用や慰謝料など、関係のある損害については支払ってもらえることになるでしょう。

プロフィール

鈴木 智洋
鈴木 智洋(すずき ともひろ)弁護士 弁護士法人後藤・鈴木法律事務所
専門は労働法(使用者側限定)、行政法(行政側限定)、動物法・ペット法。動物法・ペット法に関しては、ペット法学会・日本法獣医学会に所属する他、国立大学法人岐阜大学応用生物科学部獣医学課程の客員准教授、名古屋市獣医師会顧問弁護士も務めている。

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