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STAP問題で揺れる「理化学研究所」 不正行為に関する「内規」はどうなっている?
理化学研究所には、「科学研究上の不正行為の防止等に関する規程」という内規があるが・・・

STAP問題で揺れる「理化学研究所」 不正行為に関する「内規」はどうなっている?

世紀の発見として注目されながら、次々と疑惑が発覚している「STAP細胞」問題。理化学研究所(理研)の小保方晴子研究ユニットリーダーらが執筆した論文について、実験画像の切り貼りや他の論文からの画像流用などが指摘され、論文の撤回が検討される事態となっている。

さらに、小保方リーダーがマウスから作成した「STAP細胞」の遺伝子を調べたところ、この細胞が、実験に使われていないはずの別の種類のマウスのものだったことが、判明したという。論文の不正疑惑だけでなく、STAP細胞の存在そのものに対する疑念が高まっている。

そんななか、理研の調査委員会は、小保方リーダーらの研究や論文に「不正」がなかったかどうかを調べている。調査を進めるうえで、根拠となっているのが、「科学研究上の不正行為の防止等に関する規程」という理研の内規だ。

この規程には、どのようなことが書かれているのだろうか。今回の調査と関連する部分を中心に、冨宅恵弁護士に解説してもらった。

●「捏造」「改ざん」「盗用」の3つに分類

「この『科学研究上の不正行為の防止等に関する規程』は、研究活動に関する不正行為を防止し、何か問題が生じたときに、迅速・適正に対応するためのルールです。

理研に所属しているかどうかを問わず、理研の研究活動に従事する者すべて(以下「研究者等」)が対象となります」

この「規程」では、科学研究上の不正行為として、「捏造」「改ざん」「盗用」の3つをあげている。それぞの定義は、次のとおりだ。

(1)「捏造」 架空のデータや研究結果を作り上げ、これを記録、報告すること

(2)「改ざん」 研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること

(3)「盗用」 他人の考え、作業内容、研究結果や文章を、適切な引用表記をせずに使用すること

冨宅弁護士はこれらの不正行為について、次のように説明する。

「(1)『捏造』は、全くの架空記録や報告を行った場合で、(2)『改ざん』は、一定の研究活動で得られた結果の内容を偽る場合をさします。

たとえば仮に、『実験をしないで、何の関連性もないデータを提出した』というケースなら、(1)の『捏造』にあたります。一方、『実験の過程や結果に手を加えて、事実と異なる研究結果を出した』というケースであれば、(2)の『改ざん』に該当することになります。

今回は、実験自体は行われているようですので、『捏造』とはいいにくいでしょう。仮に、事実と異なる研究成果を偽って報告していたのだとすれば、『改ざん』にあたるといえそうです」

いずれにせよ、これらのどれかにあてはまれば、「研究不正」に該当するというわけだ。

●「研究費返還」や「懲戒解雇」もありうる

それでは、(1)~(3)の疑惑があった場合、どんな対処がされるのだろうか。

「規約上、理研の研究者等は、不正研究の疑いについて、理研側に説明する義務を負っています。

疑惑究明の手順としては、まず、理研内の監査・コンプライアンス室長が、『予備調査』を実施し、理研に報告することになります。

そして、理研は、本調査が必要であると判断した場合には、『調査委員会』を設置し、科学研究上の不正行為が行われた否かの調査を行います。

理研は、本調査が決まった時点で、一時的に、研究者等に対して研究費支出停止などの措置をとることもできます」

STAP細胞については現在、この「調査委員会」が本調査を行っている段階だ。その結果が出た場合、どうなるのだろうか。

「本調査の結果は公表され、不正があったと判断されれば、規定に基づく処分や論文等の取り下げ勧告、すでに使用した研究費の全部または一部の返還請求などの処分が下されます。

また、理研の『定年制職員就業規程』では、科学研究上の不正行為が認定された場合の処分として、『懲戒解雇』も定められています」

STAP細胞をめぐり次々と発覚する疑惑について、こうした規定と照らし合わせると、今後、重い処分もあり得るのだろうか? 冨宅弁護士は次のように話していた。

「今回の問題は、日本国内とどまらず、海外を巻き込んだ大問題になっています。社会に与えたインパクトが非常に大きいことも考慮すると、もし、調査委が今回の行為を『科学研究上の不正行為』だと判断し、それが確定すれば、研究費の返還請求や懲戒解雇という非常に厳しい処分も考えられるのではないでしょうか」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

冨宅 恵
冨宅 恵(ふけ めぐむ)弁護士 スター綜合法律事務所
大阪工業大学知的財産研究科客員教授。多くの知的財産侵害事件に携わり、プロダクトデザインの保護に関する著書を執筆している。さらに、遺産相続支援、交通事故、医療過誤等についても携わる。「金魚電話ボックス」事件(著作権侵害訴訟)において美術作家側代理人として大阪高裁で逆転勝訴判決を得る。<https://www.youtube.com/c/starlaw>

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