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性的指向を上司に暴露された男性、豊島区へ救済申し入れ 会社側は「"善意"でアウティングした」
アウティングされた男性(2020年6月12日、東京都、弁護士ドットコム撮影)

性的指向を上司に暴露された男性、豊島区へ救済申し入れ 会社側は「"善意"でアウティングした」

会社で本人の了解なく性的指向や性自認を暴露するアウティングをされたとして、20代の男性が6月12日、勤務する保険代理店がある東京都豊島区に対し、会社側への指導や被害実態調査などを求めた。

男性は2019年5月に入社してすぐにアウティングを受け、職場の人から避けるような態度を取られた。その後体調を崩し、現在まで休職している。

豊島区への救済申出後、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開いた男性は「人が信用できなくなり、恐怖を覚えるようになりました。今後、私のような被害者が出ないでほしい」と訴えた。

●暴露した上司「一人ぐらい、いいでしょ」

男性は2019年5月、豊島区にある保険代理店に入社。豊島区で同性カップルなどをパートナーとして認める「パートナーシップ制度」を利用していたこともあり、労働契約書の緊急連絡先を書く際に、社長と上司2人に性的指向と同性パートナーがいることを打ち明けた。

男性は「業務上必要であるときのみ、自分から自分のタイミングで緊急連絡先との関係性を説明する」とお願いしていたものの、6月末に上司から「同性愛者のパートナーがいることを、パート女性に言った。自分から言うのが恥ずかしいと思ったから、俺が言っといたんだよ。一人ぐらい、いいでしょ」などと言われたという。

パート女性は男性のことを無視したり避けたりするようになり、男性は次第に不眠や頭痛などに悩まされ出勤が不安定となった。上司からは暴力などパワハラも受けるようになり、11月には抑うつ状態と診断された。

●「国はアウティングについて取り上げて」

2019年12月、男性は労働組合「総合サポートユニオン」に加入。2020年2月からアウティングについての謝罪と補償などを求めて団体交渉を2回おこなったが、会社側は「アウティングをしたのは事実だが、(男性が)入社面接時にセクシャルマイノリティに対しオープンな会社にしたいと言っていたので、善意でアウティングした」などと返答したという。

ユニオンの佐藤学さんは「何回か団体交渉していても、アウティングの概念自体をいまだにわかっていない。アウティングが人の生死を分けるような問題という認識が決定的にない」と指摘。

男性は「団体交渉前にも社長と話しているが、それでもいまだに認識がないということは、これから先も理解してもらうのは難しいのかもしれない。国がアウティングについて、大きく取り上げて行くしかないのかなと思っている」と話した。

●会社側の見解は

会社側は「当該社員と交渉をおこなっているのは事実。一部認識違いがあり、組合を通して問題解決に向けて、今後も話しあっていく所存です」とコメントした。

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