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屋内遊園地で「靴箱に置いた靴」がなくなった! 施設側に「紛失の責任」はないのか?
写真はイメージ

屋内遊園地で「靴箱に置いた靴」がなくなった! 施設側に「紛失の責任」はないのか?

東京都内の「屋内遊園地」に子どもを連れていったとき、入り口の靴箱に置いた靴がなくなってしまったーー。そう話すのは、主婦のJ子(30代)さんだ。施設の入り口に、鍵のついていない「オープンな靴箱」がある屋内遊園地を利用したとき、トラブルに遭遇した。

「履いていたのは、流行しているスニーカーでした。さあ帰ろうと靴箱に戻った時、自分の靴がなくなっていることに気がついたんです」。しかし、置いたはずの場所のすぐ近くに、全く同じ種類のスニーカーを発見。「サイズや色、型もまったく一緒。違うのは、私がおろしたてのピカピカなのに、残っていたのは、薄汚れていたことでした・・・」

施設の係員に事情を話したが、「施設は紛失の責任を負いません」という掲示を示され、施設には責任がないと言われたという。J子さんは「不特定多数の人が利用するのだから、靴箱に鍵をつける義務があるのではないでしょうか? 腹が立って仕方ありません」と怒りを込めて語る。

誰でも簡単に盗めるような靴箱を設置した施設が「紛失の責任は負いません」と責任を逃れることは許されるのだろうか。寺林智栄弁護士に聞いた。

●施設側に紛失の責任はあるか?

「残念ながら、原則として、施設側は紛失の責任を負わないでしょう。靴箱の利用は強制ではありませんし、そもそも、私物管理は、私物を所持している本人が行うものだからです」

寺林弁護士は、そのように指摘する。

「ただ、仮に施設内への私物持込みが禁じられ、ロッカーや靴箱の利用が義務付けられている場合は、話が変わってきます。

その私物を持っている人の管理権限を、施設利用中は施設側が半ば強制的に排除することとなるのですから、施設側が責任をもって管理する義務が生じると考えられます。

この場合には、施設側が盗難を防止する措置を採る義務を負うことになるのではないでしょうか。たとえば、今回の例では、靴箱に鍵をかけられるようにするということが考えられます。ケースによっては、紛失した場合に弁償の責任を負う可能性もあります」

●「責任が発生するのはごくまれ」

J子さんの場合、施設側から「紛失の責任を負いません」という掲示を根拠に、責任を否定されたそうだが、この主張に法的な根拠はあるのだろうか。

「『紛失の責任を負いません』の一言では、責任を免れることはできるとは一概に言えないのではないでしょうか。

私物持込みが禁じられていないケースでも、以前から盗難・紛失が相次いでいるような施設では、場合によっては、施設側が盗難について責任を負わざるを得ないケースもあるかもしれません。ただ、不特定多数の人が出入りするような施設では、このような責任が発生するのはごくまれなケースといわざるを得ないでしょう。

施設側が紛失の責任を負う、あるいは、鍵付きの靴箱など盗難防止措置を講じるとなると、施設利用料も高額になることが予想されます。特に安価な施設を利用するケースでは、自分の持ち物は自分で責任を持って管理することを心がけることが必要です」

入り口で靴を脱ぐような施設を利用する場合には、トラブルに巻き込まれないよう、くれぐれも気をつけたほうが良さそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

寺林 智栄
寺林 智栄(てらばやし ともえ)弁護士 NTS総合弁護士法人札幌事務所
2007年弁護士登録。札幌弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)、ともえ法律事務所(東京都中央区日本橋箱崎町)、弁護士法人北千住パブリック法律事務所(東京都足立区千住)を経て、2022年11月より、NTS総合弁護士法人札幌事務所。離婚事件、相続事件などを得意としています。

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