著名弁護士の本棚〜実務で使うおすすめ書籍5選〜 【自己破産、債務整理、生活再建】太田伸二弁護士
各分野の著名弁護士にインタビューし、若手や初学者向けの「おすすめ書籍=推し本5冊」を選んでもらいました。(弁護士ドットコムタイムズVol.70<2024年3月発行>より)
自己破産、債務整理、生活再建
貧困問題に取り組む太田伸二弁護士。大学卒業後、山形県職員として生活保護のケースワーカーを3年間務め、「貧困の現場を見たことが現在の活動につながっている」という。
生活困窮者や障害者らの支援団体との関係も深く、債務整理や自己破産の対応をしてほしいと頼まれることも。ただ、きちんと打ち合わせに来たり、必要書類を揃えたりといったことが難しい当事者も多く、根気が必要なのだそうだ。
『福祉的アプローチで取り組む弁護士実務』はそうした当事者への対応のヒントが豊富。接遇法という点では、『イライラ多めの依頼者・相談者とのコミュニケーション術』も取り入れられる内容が多いという。「人間力だけでなく、科学的な知見も取り入れたほうが依頼者の満足度も高まると思っています」。
『破産実務Q&A220問』は法律面で迷ったら必ず参照するという。小規模法人の事件なら三森仁監修『東弁協叢書 法人破産申立入門』(第一法規)。依頼者を生活保護などの福祉制度につなぐことも多く、『生活保護の実務最前線Q&A』や佐々木育子編著『Q&A実務家が知っておくべき社会保障』(日本加除出版)も重宝しているそうだ。
『社会を変えてきた弁護士の挑戦』は事務所のボスで貸金業法改正に尽力した新里宏二弁護士の軌跡をたどる本。当時の雰囲気は小島庸平『サラ金の歴史』(中央公論新社)にも詳しい。
「全部を一気に変えることは難しい。でも、生活保護なら大学生への適用や自動車の保有など、自分がチャレンジできる領域はある。変えられるところは一歩でも変えていければ」
【太田弁護士の5冊&ひとこと】
- 『福祉的アプローチで取り組む弁護士実務 ―依頼者のための債務整理と生活再建―』弁護士とソーシャルワーカーの協働を考える会・編著 第一法規/発行 2020年1月 2,970円(税込)障害を抱えた依頼者とどう向き合い、進めるかの参考に
- 『法律家必携!イライラ多めの依頼者・相談者とのコミュニケーション術「プラスに転じる」高葛藤のお客様への対応マニュアル』土井浩之/大久保さやか・編著 若島孔文・心理監修 遠見書房/発行 2021年7月 1,980円(税込)臨床心理士と弁護士が共同で高葛藤の依頼者への対応法を検討
- 『破産実務Q&A220問(全倒ネット実務Q&Aシリーズ)』木内道祥・監修 全国倒産処理弁護士ネットワーク・編 金融財政事情研究会/発行 2019年11月 5,830円(税込)破産実務の全場面を網羅 破産手続に関わる弁護士の定番書
- 『生活保護の実務最前線Q&A─基礎知識から相談・申請・利用中の支援まで─』福岡県弁護士会生存権擁護・支援対策本部・編 民事法研究会/発行 2020年5月 4,620円(税込)弁護士業務によく関わる部分を中心に掘り下げて生活保護の制度を解説
- 『社会を変えてきた弁護士の挑戦─不可能を可能にした闘い─』新里宏二・著 弁護士新里宏二古希記念出版編集委員会・編 民事法研究会/発行 2022年8月 3,300円(税込)クレサラや優生保護法など社会問題に取り組む新里弁護士の古稀記念出版
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太田伸二弁護士
新里・鈴木法律事務所。仙台弁護士会。62期。