「我々には強力なコンテンツ基盤がある」法律×生成AIの可能性、トムソン・ロイターのリーガルテック戦略
生成AIが目まぐるしく発展する中、リサーチや契約書チェックなどのリーガルサービスとの連携が注目されている。 「リーガルテック」の展望について、判例データベース「ウエストロー(Westlaw)」などを提供するトムソン・ロイター代表取締役社長の三浦健人氏は弁護士ドットコムの取材に応じ、「透明性、信頼性が重要になる」と強調する。 強みである法律データの蓄積と開発力を生かし、製品への生成AI導入を進めていくという。
トムソン・ロイターの三浦社長。同社は7月23日、日本初開催となる「リーガルサミット2024」を主催した(提供)
信頼できるデータベースとAIの連携
三浦社長は今年7月に就任。現状の法律業務と生成AIとの関係について、「『信頼性』が重要な業界で、まだ一歩引いて見ている企業や当事者が多い」と現状認識を語る。
法律や医療といった分野では、人や企業の将来を左右する繊細な判断がおこなわれる。生成AIによる誤答(ハルシネーション)のリスクは何としても避けたい。
この問題をクリアするための強みが、同社が1851年の創立以来積み重ねてきた報道や法令、判例データなどの「データベース」の活用だという。
「現在市場に出回っている生成AIは、圧倒的な量の情報を与えられていますが、信頼性や透明性をどうやって高めていくかが課題です。
一方、我々はデータベースが先にあって、信頼できる答えを導くことができる。問題はどれだけ活用のスコープを広げていけるかです。目指すところは同じでも、アプローチが真逆なんですね」(三浦社長)
たとえば、日本市場ではこの秋に、法律文書のレビューなどができる法律特化AI「CoCounsel(コ・カウンセル)」のリリースを予定している。
基盤はOpenAIの「GPT-4」だが、同社の膨大なデータを活用することで、誤答リスクを大きく下げたという。担当者いわく「ガードレールを入れました」。
同社では生成AIの研究開発に年間計1億ドル以上を投資し、全世界で製品の開発・改善を進めていくという。
インタビューに応える三浦社長(7月23日撮影)
「日本にどんどん投資」
ただ気になるのは、日本の法律や慣習にどれだけ馴染むかという点だ。
「一般論として、どのソフトウェアもローカライズするには工夫が必要です。ただ、我々は日本市場にビジネスチャンスがあると捉え、今後どんどん投資していく予定です。
また、規制やコンプライアンスはむしろ、今後グローバル化がより進むはずで、我々が持っている世界レベルの専門的データベースにメリットを感じていただけると思います」(三浦社長)
製品を通して、弁護士や法務部員のリーガルリサーチやチェック業務を軽減し、より自身や企業価値を高めるための活動にリソースを割けるようにしたいという。