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「AI×知財」サービス 理系弁護士が自ら開発 BUSINESS LAWYERS AWARD 2025 岩原将文弁護士

「AI×知財」サービス 理系弁護士が自ら開発 BUSINESS LAWYERS AWARD 2025 岩原将文弁護士

「BUSINESS LAWYERS AWARD 2025」全受賞者インタビュー。起業部門の岩原将文弁護士(岩原法律事務所)に聞く。 【受賞理由】 AIの技術的知見、ビジネス経験、知財法務という三つの専門性を融合させ、IP-RoBo社を創業し、弁護士として感じていた課題を解決すべく、AI商標調査アシストシステム「TM-RoBo」を自ら開発。専門家の調査業務を効率化し、日本の知財エコシステムの発展に貢献している。ドメインエキスパートとして技術開発を主導し、知財実務の未来を切り拓く取り組みは高く評価される。 【プロフィール】 いわはら・まさふみ 大阪大学大学院で人工知能を研究対象として修士号を取得後、大手広告代理店勤務を経て弁護士登録。知財法務を専門とする傍ら、株式会社IP-RoBoを創業。AIを活用してネーミングから商標調査までをワンストップで効率化するサービス「TM-RoBo」を開発し、知財実務の革新に取り組む。

弁護士に失望した広告マン時代

「人と違う、難しいことに挑戦したい」。大阪大学基礎工学部情報工学科で、岩原将文氏は学科同期の中でただ一人、産業界に近い応用研究を行う研究室を志望した。当時は第2次AIブーム。その可能性を信じて飛び込んだ。

大学院修了後、バブル期で理系学生への求人が殺到する中、あえて選んだのは広告代理店だった。「これからはAIで広告が変わる」と予見し、当時の最先端コンテンツビジネスに身を投じた。

転機は、特殊映像システムを提案したプロジェクトでおとずれた。海外での撮影について現地プロダクションと複雑な契約を結ぶ必要が生じたため、大手法律事務所へ相談に赴いたが、そこで待っていたのは“失望”だった。「対応した弁護士は、自身の知っている既存の枠組みに技術を当てはめようとするばかりで、我々がやろうとしている新しい試みを理解してくれませんでした」

現場を知らない専門家が、技術の活用を阻害しているのではないか。その歯がゆさが、理系のキャリアから法律家となる挑戦を決意させた。

「VCからの資金調達」断ったワケ

当初は仕事を続けながら司法試験の勉強をしていたが、試験に専念すべく退職。2年半後、30歳の時に合格した。膨大な知識を丸暗記するのではなく、自身の思考プロセスをAIに見立てるという独特の学習法で突破した。「問題文の文言同士の関係性をデータとして解析し、論理構造を組み立てる。これは現在の機械学習や大規模言語モデル(LLM)の考え方に通じるものです」。晴れて弁護士になると、迷わず知財専門の道を選んだ。

しかし、実務の現場に入って驚いたのは、最先端技術を扱うはずの知財業界が、調査や判断において驚くほどアナログな人海戦術に頼っている現実だった。「テクノロジーを扱う分野なのに、なぜテクノロジーを使わないのか」。その疑問を抱き続けていた頃、機械学習の実用化やディープラーニングの登場による第3次AIブームが到来する。「これなら実用に耐えうる」と確信し、知財専門の弁護士やエンジニアを集め、商標調査のAI化に着手した。

開発では、ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達をあえて断り、自己資金と手弁当で進める道を選んだ。「外部資本を入れれば短期間での収益化を求められ、商標調査の『精度』という本質的な価値の追求が疎かになるおそれがある」と判断した。現在もシステムの根幹となる設計図(上流工程)は自ら引く。法的な思考プロセスをどうアルゴリズムに落とし込むか。エンジニアと対等な言語で渡り合える希少なバックグラウンドが、実用性の高いシステムを生み出した。

地方事務所が『TM-RoBo』に熱視線

ポーラ、小林製薬、ライオン、TOTO―。名だたる大手企業が、岩原氏の開発した商標調査・作成業務の効率化を実現するツール『TM-RoBo』を導入している。

このサービスでは、AIが商標の類似性を数値とヒートマップ(色)で可視化することができる。従来は熟練者の「勘」と膨大な時間に頼っていた調査業務が、劇的に効率化される。従来は困難だった文字結合商標の検索も可能にしている。AIが1次スクリーニングを行い、判断が難しいグレーゾーンのみを専門家が担う。人とAIの最適な分業モデルこそが、現場に支持される理由だ。

この最先端ツールに現在、熱視線を送るのは、地方の特許事務所だという。従来、地方では「持ち帰って検討したのちに回答」という対応が通例だった。そこに『TM-RoBo』を導入した事務所は、顧客の目の前で、瞬時に数値と色で結果を提示する。そのスピードと先進性が顧客に強烈なインパクトを与え、「同業者との差別化」という武器になる。

大学でAIを研究し、広告代理店でビジネスの現場を知り、そして法曹界へ。特異なキャリアの掛け合わせで、起業家として道を切り拓いてきたが、「もっと若いうちに始めていればよかった」と50代での起業を振り返る。個別の紛争解決も重要だが、自らシステムを構築することには、社会の仕組みそのものを変えることができるポテンシャルがある。

「チャレンジして失敗しても構わない。“いち弁護士”に戻ればいいんですから」。法曹資格という最強のパスポートがあるからこそ、恐れずにリスクへ飛び込める。「人と違うことをやるのは面白いですよ」と語る岩原氏は、次世代の弁護士たちがテクノロジーを武器に、より自由に、より大胆に羽ばたくことを期待している。

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