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企業法務を得意にする「ひと工夫」〜実践続ける弁護士が語り合う〜

企業法務を得意にする「ひと工夫」〜実践続ける弁護士が語り合う〜

企業法務をもっと得意分野にするためにはどんな工夫をすればいいのか−−。弁護士ドットコムでは3月19日、企業法務に注力する弁護士を集めて、対談イベントを開催しました。パネリストは、前事務所案件が少ない状態で開業した、札幌の阿部竜司弁護士と、東京の中野雅也弁護士、弁護士法人のボードメンバーとして事務所経営にも参画している西尾公伸弁護士。司会は青木美佳弁護士。顧問先の獲得や関係構築のための取り組みを、様々な角度から語りました。 (弁護士ドットコムタイムズVol.71<2024年6月発行>より)

事務所名と場所にこだわり検索上位に表示


まず重要なのは、顧問先をどう獲得していくのか−。中野弁護士がインターネットを活用するうえでの工夫を語りました。

「独立時から複数のポータルサイトに登録して、企業の方との繋がりをつくってきました。他士業からの『お金をかけて集客すべき』というアドバイスで始めて、契約につながっています。ポータルサイトは運営会社によって特色があるので、営業の方の話を聞きながら、できることを続けています。ただ載せるだけでなく、サイト内で他の弁護士より目立つにはどうするのかを考えて、工夫しています。事務所の場所と名前にもこだわりました。自宅から近く、多くの路線が乗り入れている飯田橋駅前に開業しました。名前は他事務所が使っていなくて、誰にでも分かりやすい、『飯田橋法律事務所』としました。いま、Googleで『飯田橋 法律事務所』で検索するとかなりの確率で、私の事務所が一番上に表示されます」

顧問先の業界ニュースを目にしたら即連絡


西尾弁護士は、顧問先との関係性づくりにおいて、大切にしていることを話しました。

「連絡を取り続けることを意識しています。必要な時に思い出してもらうために、あえて用事を作りにいくのはとても大事だと考えます。例えば、顧問先企業の経営者の誕生日には、『おめでとうございます』と伝える。顧問先の業界に関するニュースを目にしたらメッセージを送る。一言二言、『あれすごいですね』『大変ですね』と伝えるだけでいいんです。顧問契約を締結して、お金を払ってもらうことに対して、継続的に価値を高め続けなければいけないと思います。そうすると、具体的なニーズが発生した時に、思い出してもらえて、『これできますか』とお問い合わせをいただいたり、さらなる契約につながったりする場合があります」

両面カラー4P名刺を特注異業種交流で活用


阿部弁護士は、さまざまなチャネルでのブランディングの重要性を説明しました。

「営業ツールとして名刺を活用しています。通常の名刺とは別に、営業用の名刺があります。両面カラー見開きで4ページ。畳むと名刺サイズになります。携帯番号や注力分野について詳しく記載しています。個人やスポットのお客様には通常の名刺を、異業種交流会などで知り合った経営者や他業種、他士業の方には、営業用の名刺をお渡ししています。

特徴的な名刺を持っている人があまりいないので、注目してもらえますし、印象に残るみたいです。その他にも、ホームページのメニュー表を作成して、パンフレット化して相談室に置いています。スポットの来所でも『顧問契約できる弁護士』だと自然と認識してくれますよ。料金表を明示して明朗会計をアピールすることも大事です。2020年のコロナ禍からはYouTubeも始めました。2〜3カ月に1回ほど更新しています。販路というよりは、ウェブ上で人となりを見せるためのツールです。弁護士が実際に話している姿を見せることで、話しやすさや事務所の雰囲気を見極めてもらえるのかなと思います。メールマガジンとブログも続けています。ブログは当初は30日連続投稿を自分に課しました。あまり法務っぽい話ばかりに偏らないように気をつけています」




解約防ぐには?稼働時間で単価を決める


顧問料をどう上げていくのか、どうすれば解約を防げるのかも悩ましい点です。中野弁護士は「時間」の重要性を語ります。

「顧問料を上げるというよりも弁護士が動く時間で単価を決めた方がいいと思います。例えば、3万円の顧問料で1時間まで対応する契約の場合、3時間対応すれば、2時間オーバーしているので、2時間分のタイムチャージをいただきます。契約書にも記載します。顧問契約は成果報酬ではないと考えていますので、稼働時間が増えたらその分をいただくようにしています」

一方で、阿部弁護士は解約を抑止するための情報発信の工夫を説明しました。

「何かしらのかたちで企業に情報を提供するのが解約されない秘訣かなと思います。事務所通信というかたちで毎月、顧問先限定で小冊子を発行しています。8000〜1万字くらい書いています。内容は事務所情報というより経営にお役立ていただけそうな、交渉技術や心理学の話などです」

資格を取って法律以外の社員研修も実施


顧問先を拡大するうえで、どんな力を磨いていけばいいのでしょうか。阿部弁護士は法律以外のスキルも重視しているそうです。
「『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著)という、世界的に有名な人生哲学のビジネス書をベースにした、認定コーチの資格を持っているので、顧問先企業で問題社員の対処法などについて社員研修を実施しています。また、紛争予防に力を入れています。裁判にならないようにトラブルを予防したり、紛争が小さいうちに問題解決するようにしています」

西尾弁護士は、企業法務において、必ずしも専門特化という点で、気負う必要がないと説明しました。

「スタートアップ法務や労働紛争の使用者側は対応しているので、顧問先には伝えていますが、得意分野について強く訴求はしていません。もちろん、覚えてもらうような得意分野があれば素晴らしいし、それを強く訴求していけばいいと思います。ただ、そうしなければならない、というわけではないので、あまり難しく考えなくていいと思います」

役割分担で、仲間を巻き込んで乗り切る


事務所の規模によって業務スタイルは様々です。西尾弁護士は、大きな事務所での役割について語りました。

「役割分担が進んで、自分が関わりたい事件を比較的担当しやすいです。不得意な事件でも、得意分野としてやってくれる仲間もいます。自分にとって、やりがいのあると感じれば、どんどん食らいついていけます」

阿部弁護士は、一人でやることの意義を指摘しました。

「お客様にとっては代表である私自身が事務所の顔で、個人を磨けば磨くほど事務所のブランディングにつながります。それに、うちくらいの規模の事務所であれば、中小企業の経営者や他士業の仲間とのネットワークが作りやすいですし、お困りごとも頼みやすいと思います。一緒に成長している感覚がありますね」

プロフィール

・阿部 竜司 弁護士(阿部竜司法律事務所) 

札幌弁護士会所属。64期。2016年に札幌で独立開業。現在は二人事務所で企業法務に注力している。予防法務や紛争解決だけでなく、組織の課題解決や人材育成など戦略面を含めた支援で企業の経営活動にも関わっている

・中野 雅也 弁護士(飯田橋法律事務所) 

東京弁護士会所属。63期。前事務所では元裁判官の弁護士から指導を受け、法律家としての基礎を習得。2020年7⽉に飯⽥橋にて独⽴開業し、一人事務所。民事訴訟、家事事件、企業法律顧問等の実績多数

・西尾 公伸 弁護士(弁護士法人Authense法律事務所) 

第二東京弁護士会所属。64期。芸能・インフルエンサーといったエンタメ関連を含む企業法務の経験に加え、自身もXリーグ(日本社会人アメリカンフットボールリーグ)の主力選手として活躍。Authense法律事務所のボードメンバーとして事務所経営にも参画

・青木 美佳 弁護士(山崎・秋山・山下法律事務所) 

第二東京弁護士会所属。69期。フリーアナウンサーとしても活躍中。特にマスメディアに関連する業務に精通し、著作権・名誉毀損・パブリシティはじめ知的財産権法分野に注力している

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