著名弁護士の本棚〜実務で使うおすすめ書籍5選〜【中小企業法務】半田望弁護士
各分野の著名弁護士にインタビューし、若手や初学者向けの「おすすめ書籍=推し本5冊」を選んでもらいました。(弁護士ドットコムタイムズVol.72<2024年9月発行>より)
中小企業法務
中小企業法務で扱う領域は広い。佐賀県弁護士会の半田望弁護士は「大企業相手の法務はスペシャリスト化が進んでいますが、中小企業法務、特に地方では何でもできるゼネラリストが求められます」と語る。
『—中小企業法務の現在』は中小企業をとりまく多様な業務のエッセンスがまとまった他にない一冊。中でも半田弁護士が執筆を担当した労働問題は、中小企業法務をやるうえで避けられない分野だ。『労働法実務 使用者側の実践知』は網羅性が高くイチオシ。相談が多い問題社員対応では『問題社員をめぐるトラブル予防・対応アドバイス』(新日本法規)が参考になる。半田弁護士自身も共著書『弁護士として知っておきたい労働事件予防の実務』(第一法規)を11月下旬に出版予定だという。
「法律まで意識が回らず、相談時には手遅れという中小企業は多い。紛争予防のために、顧問弁護士を活用することの重要性をもっと知ってもらう必要があります」
近年は高齢化や人手不足による事業承継の相談が増えているという。会社法だけではなく相続や労働、信託など広範な知識が問われる分野だけに、研究者による理論書『会社事業承継の実務と理論』は一読の価値あり。
中小企業での契約関連の実務では、網羅性重視のほうが役立つとして『契約実務ハンドブック』と、見落としがちな下請法の解説書として『弁護士のための下請取引規制法の実務』も推した。
刑事弁護への関心も高く、日弁連・接見交通権確立実行委員会の委員長なども務める。取調べへの弁護人立会いの実現に向けて活動中だ。
【半田弁護士の5冊&ひとこと】
- 『企業の悩みから理解する弁護士として知っておきたい中小企業法務の現在』山下眞弘・編著/半田望/堀田善之/中野知美/石田優一/山下宜子・著/第一法規/発行・2021年2月/3,190円(税込) 中小企業法務全体を俯瞰1冊で幅広い業務の重要事項を把握できる
- 『労働法実務使用者側の実践知【第2版】』岡芹健夫・著/有斐閣発行・2022年8月/4,290円(税込)あらゆる論点をコンパクトに網羅 労働者側で読んでも得るものがある
- 『会社事業承継の実務と理論』山下眞弘・著/法律文化社発行・2017年2月/3,300円(税込) 高齢化で事業承継は中小企業の関心事多分野にまたがる法律問題を学者が整理
- 『契約実務ハンドブック』長瀨佑志/ 長瀨威志・著/日本能率協会マネジメントセンター発行・2017年3月/3,080円(税込) どんな相談が来るか読めない中小企業法務 カバー範囲の広さが実務で役立つ
- 『弁護士のための下請取引規制法の実務』鈴木満・監修/神奈川県弁護士会独占禁止法研究会・編著/第一法規発行・2022年12月/4,620円(税込)発注側にも受注側にもなる中小企業 業種別にQ&A方式で解説
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半田望弁護士
半田法律事務所。佐賀県弁護士会。61期