著名弁護士の本棚〜実務で使うおすすめ書籍5選〜 【労働問題】佐々木亮弁護士
各分野の著名弁護士にインタビューし、若手や初学者向けの「おすすめ書籍=推し本5冊」を選んでもらいました。(弁護士ドットコムタイムズVol.67<2023年6月発行>より)
裁判官が引用する裁判官の本
日本労働弁護団幹事長を務める佐々木亮氏。『新・労働相談実践マニュアル』は、同弁護団が労働弁護士や労働組合向けにつくった本だが、「使用者側の先生からも『使っています』とよく言われます」。
『類型別 労働関係訴訟の実務』は裁判官が書いた本。「労働事件を担当する裁判官は必ず読んでいると思いますので、裁判所の考え方を確認するのに最適です」。裁判官本としては、白石哲『労働関係訴訟の実務』(商事法務)も参考になるという。
労働分野は法改正が多く、幅も広い
意外なことに、佐々木氏は弁護士になるまで労働法をきちんと学んだことがなかったという。一言に労働分野といっても、残業代や解雇、労災、セクハラ、パワハラなど範囲が広い。事件を担当するたびに、前述の『マニュアル』や名著とされる菅野和夫『労働法』(弘文堂)などで必死に勉強したそうだ。
おすすめで挙げた『詳解 労働法』は、佐々木氏が「菅野本に代わってスタンダードになる可能性がある」と“世代交代”を予測する千ページ超の大著。その理由は「労働分野は更新が速いから」。新しい裁判例や法改正などに対応するためにも、常に書籍はアップデートしておいたほうが良いという。
労働組合がらみの事件では『不当労働行為法』のほか、西谷敏『労働組合法』(有斐閣)、東京南部法律事務所編『労働組合Q&A』(日本評論社)もおすすめ。『Q&A 労働事件と労働保険・社会保険・税金』は、労働隣接分野で役に立つという。
このほか、残業代請求では渡辺輝人『残業代請求の理論と実務』(旬報社)、旬報法律事務所編『未払い残業代請求 法律実務マニュアル』(学陽書房)を挙げた。
【佐々木弁護士の5冊&ひとこと】
- 『新・労働相談実践マニュアル 』日本労働弁護団・著 日本労働弁護団/2021年12月 5,500円(税込)労働関係者に愛されるロングセラー
- 『類型別 労働関係訴訟の実務〔改訂版〕 Ⅰ・Ⅱ』佐々木宗啓ほか・著 青林書院/発行・2021年6月 (Ⅰ)4,950円(税込)・(Ⅱ)5,170円(税込)10人を超える現役裁判官が執筆
- 『詳解 労働法 第2版』水町勇一郎・著 東京大学出版会/発行・2021年9月 8,580円(税込)労使双方に聴取バランスよい体系書
- 『不当労働行為法~判例・命令にみる認定基準』山川隆一・編著 第一法規/発行・2021年11月 3,740円(税込)判例・命令をもとにした実務解説書労働組合の紛争で重宝
- 『第2版 弁護士・社労士・税理士が書いたQ&A 労働事件と労働保険・社会保険・税金』大橋さゆり/中島ふみ/宮沢孝児/山中有里/岸祐司/村角明彦/伊藤誠一・著 中島 光孝/椎名みゆき・監修 日本加除出版/発行・2020年6月/5,280円(税込)見落とされがちな労働事件の周辺領域をカバー
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佐々木亮弁護士
旬報法律事務所。東京弁護士会。56期。