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求められるのは創意工夫した実績〜弁護士キャリア最前線〜

求められるのは創意工夫した実績〜弁護士キャリア最前線〜

売り手市場と言われる、弁護士の採用戦線。激化する競争の中で優秀な人材を獲得するため、 法律事務所は今何をすべきなのか。また、これからの法律事務所で求められるのは、どのような人材なのか。 弁護士・法務人材のキャリア支援サービス「弁護士ドットコムキャリア」のコンサルタントが 弁護士法人ブライトの和氣良浩弁護士にインタビューし、弁護士採用の実情について聞きました。 聞き手/弁護士ドットコムキャリア 井上翔太、原田大介 文/是永真人 (弁護士ドットコムタイムズVol.67<2023年6月発行>より)

売り手市場の弁護士採用
働きやすい環境をつくり人材を確保

―現在、弁護士は売り手市場と言われています。採用の難しさは実感されていますか
 当事務所では64 期を募集した際に約100 名の応募がありました。その出来事から採用活動に力を入れなくても人材は集まると認識してしまったのですが、今は本当に難しく売り手市場であることを実感しています。これはインハウスロイヤーが増え、法律事務所の数自体も増えていることに起因していると考えています。

―そうした状況で人材を確保するためにどのようなことに取り組んでいますか
 ワークライフバランスを整えることです。昔は「終電までには帰ろう」などと話していましたが、今の時代にはそぐわない。オフの時間を確保できるよう、テレワークの導入や産休・育休の取得も積極的に推し進めています。

―もともとの業務量が多いとワークライフバランスに配慮するのも大変ですよね
 そのために注力したのがDXです。自宅でも仕事ができる仕組みを整備し、やり取りも遡って確認できるようにしました。その上で、アシスタント・パラリーガル制度を新たに設けてスタッフを増員し、例えば弁護士が事務作業に費やす時間を減らし、弁護士でしかできない業務に集中できるようにしました。クライアントとのコミュニケーションにおいても、アシスタントが事務所に居てくれるので弁護士は多様な働き方ができる、というわけです。
 もう一つは専門分野への特化です。初めて担当する分野だとどうしても調べものが多くなり、その分、時間もかかります。専門分野をつくることで仕事のスピードアップを図り、働きやすさにつなげています。


弁護士人材の課題
戦いを避ける弁護士が増えている

―弁護士界全体を見て、人材面の課題はありますか
 年々、法的素養が不十分と思われる人材も増えています。しかし、その点は事務所で勉強会などを開くことでカバーできる。一番の問題は、戦いを避ける弁護士が増えていることです。本来、弁護士とはクライアントのために戦う職業です。ところが、訴訟をやりたがらず、クライアントに対しても「こうするべきだ」と説こうとしない。代理人としてクライアントの抱える問題解決を図らなければならないのに、クライアントの希望を伝えるだけのメッセンジャーになっている。そのようなスタンスでは、今後ますますAIが発達する中で弁護士として活躍するのは難しいでしょう。

クライアントと向き合い、
創意工夫できる人材が求められる

―これから法律事務所で求められるのはどのような人材でしょうか
 法的な立場からクライアントの身になって考えられる人です。クライアントと向き合うために、理解力や洞察力、コミュニケーション力といった基本的な人間力を備えた人材が求められます。AIや情報収集ツールの発達により専門知識を有しているだけでは足りません。

―基本的な人間力は弁護士になった後でも備わるものですか
 クライアントとの対話を通じて、自分で考えて案件を解決していく中で磨かれていくものだと思います。人間力は後天的に身に付けられる素養です。

―弁護士が転職する際、どのような経験が重視されますか
 やはりクライアントと向き合い、自分なりに考えて成果を出した成功体験です。案件の大小は関係ありません。ビッグプロジェクトでも交通事故でもどのような創意工夫をしたのか、という点を重視しています。たとえば、クライアントが交通事故でむち打ちになった時にどうやって後遺障害等級14級の認定を受けたか。その過程に、その人の仕事に取り組む姿勢が詰まっていますし、工夫して勝ち得た経験は飛躍へのベースとなります。また、転職先はお世話になった弁護士の先生や先輩のコネクションから行ける事務所を選ぶのではなく、自分がどうなりたいかを考え、キャリア形成の観点から選ぶべきです。

採用基準は
入所後の自分をイメージできているか

―弁護士法人ブライトにおける採用プロセスを教えてください
 対応する弁護士やスタッフを変えながら原則3回の面接を行っています。面接では仕事のやり方やワークライフバランスについて説明し、当事務所に入所した後の姿がイメージできているかどうかを確認します。

―事務所としてどのような点をアピールしていますか
 所内の専門部(企業法務部、労災事件部、倒産部、交通事故部など)に一定期間所属することで、専門分野の経験が浅くてもイチから深く学べる機会が与えられる点や、ローテーション制度のもと、法人向け・個人向けを問わず幅広い分野に携われる点をアピールしています。また、パラリーガルやアシスタントと協働し、チームとして仕事をすることで「弁護士としてやるべき業務」に集中でき、クライアントに求められる弁護士スキルを早期に獲得できる土壌があること、ワークライフバランスも図りやすいこと等をお伝えしています。DX化を積極的に進めている法律事務所だと強調することもあります。それと、売上を求めないことも特徴です。弁護士個人に売上を求めても弁護士にはメリットがなく、プレッシャーになるだけです。売上の確保はあくまでも事務所の責任だと捉えています。

弁護士ドットコムキャリアで採用した
インハウスロイヤーが活躍中

―採用では転職エージェントも活用されますか
 今ではエージェント経由での採用の方が多いくらいです。特に、弁護士ドットコムキャリアで採用したインハウス出身の弁護士が活躍しています。当事務所は主に訴訟法務を手掛けてきたため、インハウスで積んだ予防法務の経験により相乗効果が生まれている状況です。事務所としても企業法務を拡大していきたいので、法律事務所とインハウス、双方の出身者が補い合い、お互いの強みを活かせる事務所にしたいと思っています。


法務人材を守るため、
新卒から法務の専門家を育てていく

―最後に、弁護士法人ブライトの今後のビジョンを教えてください
 企業法務に携わる中で、法務は内製化するのがとても難しいポジションだと痛感しました。中小企業はインハウスロイヤーを雇う余裕はなく、大手企業も弁護士が辞めれば同じ業務を継続できない。一方、法務部があるような企業では総合職採用が行われ、企業法務を目指す法学部の学生もその会社の法務部に配属されるかはわかりません。そこで、企業法務に興味のある法学部生を新卒で採用して法務の専門家に育て、企業と事務所の架け橋になるようなサービスを作りたいと考えています。法務人材を増やし、守ることが企業の成長にもつながるはずです。法律事務所から企業法務のプロフェッショナルを目指せる道を示すためにも、インハウス出身の弁護士を採用していく予定です。インハウス出身の弁護士も自社だけでなく、多様な企業の法務部を手掛けることができて、やり甲斐があるのではないかと思います。

―弁護士ドットコムキャリアでは、まさに人材面から事務所の成長や課題解決をお手伝いしたいと思っています
 2024 年には東京に支店を開設し、3年後には大阪と同程度に拡大する予定なので引き続き力を貸してください。東京では不動産業界など法務の重要性を理解する業界に絞って事業を展開し、各業界に強い法務人材も自分たちで育てたいと思っています。

お知らせ

弁護士ドットコムでは、弁護士・法務人材のキャリア支援サービス「弁護士ドットコムキャリア」を展開しています。これまで蓄積してきた知見と、豊富な弁護士・法務人材のデータベースをもとに、各事務所・企業の特徴や状況に合わせたキャリア支援を行っております。
https://career.bengo4.com/

弁護士法人ブライト 2009 年設立。法人向け・個人向けを問わず、高度の専門性を幅広く備えており、弁護士業界の「総合病院」を志向している。案件ごとに専任の弁護士、スタッフがチームで対応。組織の力を結集し、最良の事件解決を目指す。

和氣良浩 弁護士

2006年、弁護士登録(大阪弁護士会)。2009年に 独立開業し、2015年に法人化、弁護士法人ブライト を設立する。起業家組織EO 大阪メンバー。 主な取り扱い分野は、企業関係法務(主に企業間 紛争、労使紛争、経営権紛争など)。 弁護士法人ブライト 2009 年設立。法人向け・個人向けを問わず、高度の専門性を幅広く備えており、 弁護士業界の「総合病院」を志向している。案件ごとに専任の弁護士、スタッフがチームで対応。組織の力を結集し、最良の事件解決を目指す。

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