著名弁護士の本棚〜実務で使うおすすめ書籍5選〜 【医療過誤(患者側)】羽賀千栄子弁護士
各分野の著名弁護士にインタビューし、若手や初学者向けの「おすすめ書籍=推し本5冊」を選んでもらいました。(弁護士ドットコムタイムズVol.70<2024年3月発行>より)
医療過誤(患者側)
患者側で30年以上、医療過誤事件に取り組んでいる羽賀千栄子弁護士をしても、この分野は勉強の連続なのだという。広範な診療科目に対応する必要があり、医学の進歩にあわせた知識の更新も求められるからだ。さらにその内容を裁判官に理解させなくてはならない。
「医師の証人尋問では質問の仕方が重要です。自由に話されると裁判官が混乱してしまうので、カルテや医学書を読み込んで、これはこういうことですよね、ここに書いてありますよね、とYesかNoかで聞けるところまで準備します」
『医療ミスでは?と思ったら読む本』は、一般読者も想定して医療問題を分かりやすく整理。2つの『地図』はビジュアル豊富で身体の理解に最適だ。薬を調べるなら『今日の治療薬』、検査異常なら『検査の手引き』。こうした基礎を踏まえ、事件に応じて専門書を読むという。このほかでは、英語辞書の『ステッドマン医学大辞典・略語辞典』。電子カルテの普及で日本語記述が増えたとはいえ、カルテや論文を読むなら英語ができたほうが有利だという。
医療過誤事件は、時間や費用もかかる。重大な被害を受けた患者側は「絶対に病院が悪い」と考えがちだが、徹底した調査をおこない、難しいことは難しいと伝えることを意識しているという。依頼者の負担を増やすだけではなく、病院側にとっても建設的ではないからだ。
仕事では「敵」になることもあるが、医学・医師へのリスペクトは欠かさない。業界への深い理解があるから、多くの医師が協力に応じる。「裁判所に提出する意見書・鑑定書は、医師なら誰でも良いわけではない。自ら人脈をつくり、信頼できる専門家に頼むことが大切です」。
【羽賀弁護士の5冊&ひとこと】
- 『医療ミスでは?と思ったら読む本[第2版]』医療事故研究会・著 日本評論社/発行 2020年3月 2,090円(税込)裁判例なども踏まえて医療事故を整理 実務で使いやすいQ&A方式100問
- 『新版 からだの地図帳』佐藤達夫・監修 講談社/発行 2013年11月 4,400円(税込)大判サイズで見るカラーイラスト700点平易な解説つきでスムーズな理解へ
- 『今日の治療薬2024』伊豆津宏二/今井靖/桑名正隆/寺田智祐・編 南江堂/発行 2024年1月 5,280円(税込)臨床で使われる医薬品情報が一目でコンパクトながら豊富な情報
- 『新版 病気の地図帳』山口和克・監修 講談社/発行 2000年11月 4,400円(税込)原因、発病のしくみ、症状、進み方など病気の全体像をビジュアルで理解
- 『検査の手引き―病院の検査がわかる[改訂第5版]』安藤幸夫ほか・著 小学館/発行 2007年1月 1,980円(税込)健康診断や人間ドックなど検査の異常値について
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羽賀千栄子弁護士
羽賀千栄子法律事務所。東京弁護士会。39期。