「生成AIで弁護士の仕事はなくなるか」業革シンポでリーガルテックを徹底分析
日弁連主催の「第23回弁護士業務改革シンポジウム」が9月7日、宮城県仙台市の東北学院大学五橋キャンパスであった。 シンポのテーマは「杜の都から発信! 変革の時代を生き抜くための弁護士業務~AIにできること、弁護士にしかできないこと~」。AI活用や創業支援など、10の分科会に分かれて弁護士らが学びを深めた。
●「正直怖い気も…」進化するリーガルテック
「リーガルテクノロジーは弁護士業務をどう変えるか」と銘打った第一分科会では、東京工業大学の岡崎直観教授が講演。同大で開発を進めている日本語に強い大規模言語モデル「Swallow」の現状と展望について話した。
このほか、リーガルリサーチや契約書レビュー、文書・案件管理など最新のリーガルテックツールについて弁護士らが使い勝手などをレポートした。
リーガルリサーチツールについて調査した平岡敦弁護士(第二東京弁護士会)は、書籍や判例といった外部情報を活用することで、ハルシネーション(誤情報)が起きづらくなっていると説明。定型業務は生成AIにとって代わられる可能性があり、「正直怖い気もする」と技術の進歩への驚きを語った。
篠島正幸弁護士(第二東京弁護士会)は、生成AIを活用した上で「弁護士にしかできないこと 」を考察。利用領域を見極めれば、生成AIで業務を効率化できるとする一方、「AIにはリーガルマインドは持てない」として、個別具体的な事案への対応や、事案に即した創造的な法的サービスの提供は弁護⼠にしかできないと述べた。
●弁護士の業務をより創造的に変えていく
議論をまとめて、野田泰彦弁護士(埼玉弁護士会)は次のように語った。
「業務効率化のためにはリーガルテクノロジーが必要。効率化を進めることでさらに依頼者の満足や法的分野を超えた分野の業務、より社会に有用な解決策の発見などを実現できるのではないか。
これは弁護士の業務拡大や発展にとどまらず、弁護士の使命として弁護士法1条に定められた基本的人権の擁護と社会正義の実現に資するものだと考えている。リーガルテクノロジーは弁護士の業務の本質を維持しながら、かつ発展させて、また創造的なものに変えていくのではないか」
第一分科会には、一般からも100人近い参加申し込みがあったといい、弁護士やサービス提供業者に限らずリーガルテックへの関心の高さをうかがわせた。
●仙台開催の意義
シンポではこのほか、「自治体内弁護士」についての分科会などもあった。
宮城県は2011年の東日本大震災で大きな被害を受けた。シンポの開会式では、村井嘉浩知事、郡和子仙台市長がそれぞれビデオメッセージを寄せ、弁護士による無料法律相談や、被災自治体内弁護士としての活動が復興に向けた支えになったと感謝の言葉を述べた。
日弁連の渕上玲子会長は、「(分科会の成果が)1月1日に発生した能登半島地震の復興の一助となればと切に願っている」とあいさつした。