社外役員、弁護士の本音は【弁護士223人アンケート】
弁護士が考える社外役員像とはどのようなものか。 弁護士ドットコムが、2025年10月19〜29日にかけて会員弁護士にアンケートを実施したところ、 223人が回答した(内訳:男性183人、女性37人、その他3人)。 経験者の就任経緯や未経験者の志望度合いなど、調査結果をまとめた。
求められる役割 ESG対応で見解割れる
社外役員にどんな役割が求められるかを尋ねたところ、「コンプライアンス」「コーポレートガバナンス」「リスクマネジメント」「専門的な法律知識」の4項目では「期待されている」と「やや期待されている」の合計が9割前後となった。
割れたのは、「ESG/サステナビリティ対応」。「期待されている」と「やや期待されている」が計25.5%、「期待されていない」と「あまり期待されていない」が計31.9%で後者がやや多い結果になった。必ずしも普遍的なスキルだとは考えられていないと言える。
ただし、企業が公開するスキルマトリックス上は社外取締役に多い傾向があるとされる。グローバル企業などでは、「ビジネスと人権」などの知見が重宝される可能性もある。

求められる能力・経験 「事業・業界理解」がトップ
社外役員に求められる能力・経験を尋ねたところ、「必要」「やや必要」の合計値は、「事業・業界理解(90.1%)」、「コミュニケーション能力(88.3%)」、「財務・会計知識(79.8%)」、「独立性(79.4%)」、「国際性(41.3%)」の順で多かった。
財務・会計知識は、必要とする回答が過半数を占めたが、内訳は「必要(26.9%)」が「やや必要(52.9%)」を大きく下回っていた。求められるレベル自体はさほど高くないと考える弁護士が多いことがうかがわれる。
海外経験や語学力といった「国際性」については、ドメスティックな企業もあるからか、「どちらともいえない」が45.7%と突出。ただ、いずれの項目についても「不要」「やや不要」は少数で、多いものでも10%前後にとどまっている。

社外役員の兼務数 「1〜3社まで」が8割超
社外役員について語る上での頻出テーマの1つが「何社まで兼務できるか」。弁護士の回答でもっとも多かったのは「3社(42.6%)」で、次点が「2社(35.4%)」だった。「1社」が6.3%であることを考えると、兼務自体は可能だが、その数には限りがあると考える弁護士が多いようだ。
ただし、活動内容などにもよるので、4社以上が不可能ということではない。株主総会の招集通知書には取締役会の出席率も記されるので、決算期などの繁忙期が重ならない会社を選んだり、本業での案件をセーブしたりと、スケジュール調整の負荷を下げる工夫が必要になりそうだ。
女性弁護士需要 「きっかけとしてはよい」「役員らの意識に変化」
現在は女性弁護士の社外役員需要が活況だ。こうした傾向を弁護士たちはどう見ているのか。自由回答を寄せた社外役員経験者の声を見ていきたい。
全体的な傾向としては、男女とも性別ありきで選ぶことに少なからず抵抗を感じていることがうかがえる。そのうえで「女性がいないよりはマシ」、「きっかけとしてはよい」と現実的な解法として評価する声が多かった。
「男性と能力があまり変わらないので、どうしても女性をとる必要がある場合には、弁護士を起用するのは有用」という意見はトレンドをうまく言い表している。
他方で「名目上の女性割合を達成するだけの流れであって、真のジェンダーバランスの解決には進んでいない」、「内部昇進の道を整えず外部登用に頼ると、女性社員の意欲を削ぐ」など、企業への批判も見られた。
女性弁護士からは「できる限り社内登用の目標とあり方を明確に決めて、実践に移すべき」、「女性社員の声を拾って何が問題であるか、取締役会で問題点等を指摘するだけでも役員らの意識に変化が生じることは感じる。もっと女性の登用が進むよう働きかけていきたい」との声もあった。
社外役員経験の有無 首都圏と関西圏に集中する傾向
社外役員の経験は「ある」が計22.9%、「ない」が77.1%。「ある」の中では大多数が「1社」だった。
「ある」と答えた51人の属性で見ると、8割超が男性。地域では首都圏(東京3会、神奈川県、埼玉、千葉県)が49.0%、関西圏(大阪、京都、兵庫県)が17.6%で合計7割近くとなった。地域については、企業が都市部に集中していることに加え、地方では利益相反が起きやすいなどの理由が考えられる。
規模別では「ある」のうち、58.8%が弁護士1〜4人の小規模事務所。必ずしも企業法務弁護士だけが重宝されるわけではないようで、企業法務案件を多く扱っているという弁護士が47.1%なのに対し、個人法務が多いという弁護士も37.2%いて、小差だった。
経験した企業規模 非上場企業が6割弱
経験者51人が選任された会社を規模別で見ると、「非上場企業」が58.8%で突出した。以下、「東証プライム(23.5%)」、「同スタンダード(21.6%)」、「同グロース(9.8%)」などと続く。
東証プライム経験者12人に限定すると、企業法務を多く扱う弁護士が6人(50.0%)。個人法務が多い弁護士も3人(25.0%)いて、企業法務弁護士だから選ばれるわけでもなさそうだ。逆にスタンダードとグロースでは、個人法務中心の弁護士は各1人しかいなかった。非上場では普段の弁護士業務で大きな差はなかった。
社外役員就任の経緯 「知人の紹介」が7割弱、根強い人間関係
社外役員になった経緯を聞いたところ、「知人の紹介」が66.7%と圧倒的に多かった。以下、「もともと関係があった(25.5%)」、「クライアントからの紹介(9.8%)」と続く。
人柄が分かっていることや交友関係から生まれる信頼感が影響していることなどが考えられる。そうだとすれば、経験者に社外役員への就任依頼が集まりやすいことも納得できる。
他方で近年は独立性の観点から、複数の候補者を集めて選ぶケースも増えているという。今回のアンケートでは少なかったが、数年後はマッチングサイトやエージェント利用が増えている可能性がある。
社外役員になりたいか 7割近くが「なりたい」
未経験者172人に社外役員になってみたいかを尋ねたところ、「なりたい(33.1%)」と「ややなりたい(34.3%)」が合計で67.4%となった。
男女別では、男性140人は「なりたい(35.7%)」と「ややなりたい(30.7%)」の合計が66.4%、女性29人は「なりたい(20.7%)」と「ややなりたい(55.2%)」の合計が75.9%だった。全体では女性のほうがややポジティブだが、希望度合いでは男性のほうが強い結果となった。
修習期別でも分析した。30〜59期までの弁護士34人ではポジティブ方向の回答が61.8%だった。これに対し、60期台67人は58.2%、70期台71人は78.9%だった。
社外役員に向けた活動 7割超が「具体的な活動なし」
社外役員になりたいと答えた116人に、具体的な活動をしているかを尋ねたが、「特にない」が 74.1% だった。そこまで強い希望がないということかもしれないが、何をしたら良いのか分からないという回答が含まれている可能性もある。
具体的な活動としてあげられたのは、企業経営者との交流を増やすなどの「ネットワーキング(12.9%)」や「名簿登録(9.5%)」。マッチングサイトやエージェントの利用はいずれも2.6%と少数だった。裏返すと本気度が高い場合は、他の希望者に差をつけられる可能性がある。
希望の規模・業種 「希望なし」が多数
社外役員になりたいと答えた116人に企業規模や業種の希望を聞いたところ、「ない」の割合が企業規模で66.4%、業種で85.3%といずれも過半数を超えた。こちらの結果からも「なれればなりたい」程度で強い希望がないことをうかがわせる。
企業規模では団子状態の中、「非上場企業」が22.4%で一歩抜け出している。スタートアップのスピード感や若さがプラスに働いているのかもしれない。あるいは「1社目の壁」を超えるための現実的な選択という可能性も。
業種については、希望あり(14.7%)がさらに少ない。社外役員に企業・業界理解や会社との相性が求められるのであれば、志望度の高さによっては業界の絞り込みが必要かもしれない。
法務パーソンはどう考えている? 弁護士需要をアンケート
2025年11月10〜13日には、弁護士を社外役員に起用することについて、企業法務の実務ポータル「BUSINESS LAWYERS」に登録する法務パーソンを対象にアンケートを実施し、259人から回答を得た。
社外役員に弁護士は必要かを尋ねたところ、「必要(37.8%)」と「やや必要(24.7%)」が計62.5%と過半数を占めた。「リスク感度が高く保てる」、「第三者的な立場からの法的視点が期待できる」、「一定の思考力が保証されている」などの意見があった。
不要サイドの回答は計1割ほど。「顧問弁護士で十分」、「実際に機能していない」などの不満が寄せられた。