“経済に疎い”といわれる弁護士からの脱却 中小企業診断士で広がった人脈「唯一無二の仕事も舞い込んだ」
「弁護士ドットコムタイムズ」9月号は、マルチスキルの弁護士特集。近年、弁護士に人気だという中小企業診断士は、経営者へのコンサルタントになり得る資格だ。4年前に取得した大阪の武田宗久氏は「人脈ができ、仕事の幅が広がった」という。資格取得の動機やメリットなどについて詳しく聞いた。(プロフェッショナルテック総研・川島美穂)
資格を得たことで経営者らと臆せず会話
武田宗久さんが中小企業診断士の資格を取得したのは2020年。弁護士になる前は地方公務員であったこともあり、いったん法律事務所を離れ、特定任期付職員として地方自治体に勤務していたときである。比較的勉強時間が取れるなか、現場に戻るときの強みになればと勉強に取り組んだ。「プラスアルファがある弁護士に」「法人顧客とつながるきっかけに」との思いが動機だったという。
「何か仕事に結びつけようとするなら、なぜその資格を取るのかイメージすることは大事だと思います。というのも、たいていの場合は弁護士を軸にしつつ、もう一つの資格とのシナジーを活用するという形になるはずです」
実際に中小企業診断士としてデビューすると、研修など出会いの場が多く用意されていた。企業の経営者だけでなく、診断士資格を保有する他士業や大手企業の会社員など多くの人脈づくりにつながった。今は補助金や執筆などの診断士プロパーの仕事もあり、幅は大きく広がった。
「弁護士になったばかりのころは財務会計の知識が全くありませんでした。社長らと会話できるようになるには、やはり財務の勉強は重要です。人脈作りに資格はなくてもいいけど、どんな人とも臆せず話せる弁護士ばかりじゃない。私の場合は、診断士の資格をきっかけとして、いろんな人と話せる機会にも恵まれたと思っています」
著書執筆へ…マルチならではの仕事も
法律的な視点だけでなく、コンサルティング的な要素も求められる場面もある。
「法律一辺倒ではない、経営判断的な思考は徐々に身についてきました。これも、中小企業診断士の研修の場などで知識を得た結果です。法律的にはどっちでもいいけど、という場面でも適切な助言ができる。診断士の資格をとるまでは、その発想すらなかったかもしれません」
ここでの出会いは、さらに著書出版にもつながった。『小さな会社のたたみ方がサクッとわかる本』(日本法令、2023年8月)は、武田氏が中心となって企画・執筆した一冊。弁護士による会社法や倒産の本はあっても、診断士による財務的な視点を入れた著書はありそうでなかった。章立てを考えるなどイチから作るのは骨が折れたが、また一つの実績になった。
集中した勉強時間は必要だがメリット大きい
任期付公務員であるため比較的時間はあったものの、試験勉強をした2か月間は、土日は8〜10時間、平日も退勤後3時間くらいは費やした。半休を取ることもあったという。
「それでも1年目は論文で落ちたんですけどね。予備校などには行かず、市販のテキストと、動画などを使って理解を深めるというやり方でした。資格取得に要した費用は受験料や受験には直結しない書籍代なども含めて15万円くらいかかりましたが、大学院に通学しなければならないMBAなどと比べたらコスパは良いかもしれません」
公務員から弁護士、さらに診断士と装備を増やしていった武田氏。最も変わったことは「視野」だという。物事を多面的に見ることができるようになったと、その効能を語る。近年大阪の診断士の会合では診断士資格を持つ弁護士が増えているそうだ。診断士資格を取得するため、2〜3カ月は試験勉強に相当の時間を費やしたものの、そのぶん得られたことのメリットは大きかった。資格取得はスタート地点に過ぎず、活用できるかはその後にかかっている。
武田宗久(たけだ・むねひさ)弁護士
1978年、大阪府富田林市生まれ。2002年京都大学法学部卒業後、大阪市役所で法規関連業務に従事。京都大法科大学院を経て2011年に弁護士登録(大阪弁護士会・64期)。現在も富田林市役所で任期付短時間勤務職員として働きながら、自身の設立した堺みらい創生法律事務所で多岐にわたる案件に対応している。