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わかりやすい非弁と非弁提携 弁護士深澤諭史:③非弁護士との協業や AI 活用について

わかりやすい非弁と非弁提携 弁護士深澤諭史:③非弁護士との協業や AI 活用について

はじめに 「弁護士しかできないけど 弁護士だけでもできない」 第1回(https://www.bengo4.com/times/articles/5633769109/)で述べたとおり、非弁とは、弁護士以外が弁護士業務を行うことです。『弁護士しかできないことは何か』が核心です。 ところで、弁護士しか弁護士業務はできないといっても、弁護士だけで弁護士業務ができるわけではありません。 本誌も編集・印刷・配送など多くの関係者の力で届きます。同じく、弁護士業務も弁護士だけでは行うことはできません。真っ先に思い浮かぶのは、いつも一緒に仕事をしている事務職員の方々でしょう。法律事務所では、事務職員と弁護士は車の両輪です。 事務職員だけではなく、事務所を借りるのであれば不動産仲介業者やオーナーが、郵便を出すのであれば日本郵便、インターネット等の回線であればインターネットプロバイダからの助力を得る必要があります。 最近では、広告を運用してくれる会社、生成AIを提供してくれる会社なども、弁護士業務の遂行にあたって重要なパートナーとなることもあります。 最終回となる第3回では、非弁規制と非弁提携規制の観点から、弁護士が弁護士以外(AIも含みます)と協力して仕事をする場合の留意点を解説します。 (弁護士ドットコムタイムズVol.77<2025年12月発行>より)

弁護士と事務職員


弁護士にとってほぼ必須(最近は、事務職員のいない法律事務所も散見されます)の存在である事務職員ですが、もちろん電話対応とか来客接遇などを行ってもらうこと、そして賃金を支払うことに問題はありません。

一方で、よく聞かれる問題なのですが、売上に比例してボーナスを与えると、報酬分配(規程12条)違反になる可能性があります。売上つまり弁護士報酬を分配していると評価できるからです。また、営業の歩合給も12条・13条1項に抵触し得ます。

ただ、業績が向上した場合や、成果、能力について、手当を出すということは、事務職員の士気向上、待遇の改善にとって重要です。そこで、規程に違反しないような支払い方法ですが、次のようにすれば、差し支えないでしょう。

業績との連動は、報酬つまり売上と連動させず、その(売上の)数値とは距離を置くことが大事です。売上ではなく利益、それも、一定の割合(%)から算出するようなことを避ければ、問題ないでしょう。

要するに、ボーナス等の支払いの理由を、売上ではなくて、それ以外の理由でも説明できるかどうかがポイントです。

弁護士と他士業


他士業(弁護士から見て、弁護士以外の士業のことをいいます)連携の重要性は、主張されて久しいです。

弁護士は法律上、「当然」、税理士と弁理士の業務を行うことが可能です(弁護士法3条2項。ただし、税理士法51条1項の制限あり)。また、法律事務全般を業務(弁護士法3条1項)としていますので、司法書士の業務も行うことが可能です。

もっとも、よほど特別な研鑽、経験をしていない限り、税務申告や特許の申請、登記をする弁護士は稀でしょう。餅は餅屋といいますが、弁護士が、これらの業務を行うことは経験上も知識上も極めて難しいです(余談ですが、弁護士は司法書士のように登記業務を扱えるが、不慣れなことも多いので、いわゆる地面師たちに利用されるケースもあります)。

たとえば、相続案件を受任したとします。弁護士として、メインの業務は、遺産分割協議書の作成とそのための交渉等となります。ただ、それだけではなくて、相続登記のほか、相続税の申告なども必要になります。これらについては、別に税理士、司法書士に依頼してください、というのが通常ですが、依頼者としては、せっかく「専門家」に頼んだのに、あれは誰にとか言われて、さらに自分で専門家を探す必要がある、同じ説明をそのたびにすることになるのは大変だという話になります。

そこで、ワンストップサービスとして、まとめて弁護士・司法書士・税理士が協力し合っている「チーム」に依頼できないか、という問題があります。

もちろん、依頼をする以上は報酬が発生します。そして、その報酬をチームの士業で分配することになりますが、ここで規程12条の問題が生じます。
規程12条は、次のとおりで、「報酬を弁護士」「でない者との間で分配してはならない」とあります。

弁護士は、その職務に関する報酬を弁護士、弁護士法人又は弁護士・外国法事務弁護士共同法人(以下「共同法人」という。)でない者との間で分配してはならない。ただし、法令又は本会若しくは所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある場合その他正当な理由がある場合は、この限りでない。


司法書士も税理士も、弁護士ではないことに変わりありません。ですから、弁護士と非弁護士で案件を共同受任して報酬を受け取り、それを受任者間で分配すると、形式的には弁護士が弁護士報酬を非弁護士に取り分けたことになります。したがって、このままでは同条に違反する可能性があります。

解決策は、各士業が依頼者と個別契約・個別精算とすることです。誰かが受け取って分配するということはしない、そうであれば、報酬分配制限に抵触しないことになります。

もっとも、依頼者からすれば、多数の契約をする等は負担が大きくなります。

せっかく専門家に依頼したのに、専門家の専門性(役割分担)に振り回される、ということになりかねません。できれば、一つの契約としたいところです。

さて、報酬分配には、非弁提携(11条)や紹介料(13条)と異なり、「正当な理由がある場合」という例外規定が12条にあります。

では、どのような場合が「正当な理由」にあたるかですが、「解説「弁護士職務基本規程」第3版(2017年 日本弁護士連合会弁護士倫理委員会編著)」は、まさにこういうケースを想定しています。同28頁によると「隣接専門職との協働によるワンストップ・サービスの提供の場合においても、分配について正当な理由があるとされることがあり得る。」としています。その条件ですが、「合理的な分配基準」であればよく、「分配基準が工夫されなければならないが、個別の案件について協働した場合(たとえば、相続事件につき、弁護士が遺産分割手続を、司法書士が相続登記を、税理士が相続税申告をそれぞれ分担処理したような場合)には、合理的な基準に基づく弁護士報酬の分配が可能であると考えられる。」としています。

問題は、合理的な基準の具体的内容ですが、この点について、同書は掘り下げておりません。

もっとも、規程12条の趣旨は、他士業が弁護士業務を代行してしまう非弁行為の抑止、紹介料の防止(仕事を持ってきた人に多額を分配する手口が考えられます)にあると考えられます。

その点からすれば、少なくとも、以下の各点を遵守する必要があるでしょう(なお、拙稿『NIBEN Frontier』2021年10月号「本当に怖い非弁提携」で同趣旨の解説をしています)。

①各担当者の業務が適法(資格の範囲内で行っている)である。
②報酬の分配割合やその算定根拠についての合意がある。
③分配の割合や金額は、それぞれの業務内容に照らして適正である。
④共同者についても非弁行為の疑いがない。

①は非弁提携(非弁行為をする者の援助)の防止、②は正当な理由の補足、③は実質的に紹介料にならないようにするため、④は厳しいですが、規程11条が、非弁行為をしていると疑わしい者との利用を禁止しているので、それに対応したものです。

近時の社会と法制度の複雑化に鑑みれば、事案によっては弁護士だけで処理することは困難です。特に、士業一般を使い慣れている企業はともかく、「あなたに必要な法的手続について、それぞれ、法的に適切で、かつ、あなたに合った士業を選んでください。」というのはかなり無理があります。弁護士等にたどり着けず、都合の良い宣伝文句を並べる非弁業者に依頼して、消費者被害になってしまうことも十分にあり得ます。これを防ぐことは、士業の社会的責任でしょう。

もっとも、他士業連携は、以上に述べたように非弁提携(報酬分配規制、紹介料規制違反)のリスクが常につきまといます。できれば、日弁連などによるガイドライン(上記解説「弁護士職務基本規程」の「合理的な分配基準」)が制定されることが望まれるところです。

弁護士と株式会社


他士業連携を取り上げましたが、弁護士倫理上、弁護士からすれば、司法書士も税理士も、株式会社も非弁護士であるという整理になります。したがって、株式会社と協業する場合には、同程度の注意が必要であり、かつ、それで足りる、ということになります。

具体的には、事実調査であるとか、法律事務以外でマンパワーが必要になる分野、あるいは、広告の代行とコンサルティング、コールセンター(電話代行)の運営、人材の派遣を受けることが想定されます。

さて、理論的には、司法書士や税理士との連携と、株式会社との連携は同じ規制のはずですが、実際には、株式会社との連携は他士業との連携以上に気をつける必要があります。

というのも、他士業との連携は、司法書士でないとわからない登記の問題、税理士でないとわからない税務の問題というものが想定できます。しかし、株式会社にはそういうことは通常ありません。

そうすると、協業の必要性は低いのではないか、必要性が低いのに協業しているのは、非弁提携ではないか、という疑惑を持たれることがあり得ます。事実として、広告費、オフィスのサブリース賃料、人材派遣の費用名目で、それを水増し請求して非弁提携をする手口は横行しています(『NIBEN Frontier』2017年10月号で、拙稿で取り上げたケースがまさにこれです)。

また、株式会社は弁護士法令について不案内なことが多いです。例えば、世間では紹介料は当たり前の存在ですが、弁護士では禁止です。
株式会社との協業は、理屈や法律の問題は別として、偏見の目で見られやすく、「(理由はないし、言えないけれども)いかがなものか」というような批判に晒されがちです。しかし、こういう態度は、あまり弁護士、法律家らしいものではありません。業務拡大の観点からも偏見を持つべきではないでしょう。

一方で、非弁提携の温床なのは間違いありませんので、上記「弁護士と他士業」と同等以上の注意は必要でしょう。

事務所承継と紹介料規制


中小零細企業の後継者難が話題に上りますが、法律事務所も例外ではありません。法律事務所は弁護士1〜2名程度、事務職員も同数程度が大多数を占めています。世間の基準で言えば、法律事務所は大部分がいわゆる零細企業ということになります。

弁護士法人であれば、事務所の承継は社員の加入と脱退(ただし、持ち分の払い戻しと課税には注意が必要です)で実現できますし、合併も可能です。

一方で、弁護士法人ではない場合、承継は個別に案件(顧問先や受任案件)を引き継いでいくことで達成します。

引き継ぎの問題もあり、単に受任弁護士を切り替えるのではなくて、承継元と承継先とで共同受任の形式をとることも多いと思います。この場合、報酬分配に制限はありませんが、承継元が労力以上に報酬の分配を受けると、承継元が承継先に事件を紹介したことについての紹介料と評価されてしまうリスクが生じます。適法に承継元の「取り分」を増やすのであれば、承継先の弁護士が承継元の弁護士の法律事務所に移籍し、合理的な範囲で事務所経費負担分として、自分の取り分から支払う等の工夫も必要でしょう。

また、事務所承継が完了する前に承継元の弁護士が亡くなってしまった場合、受任者の死亡により委任契約は終了します。その場合、承継先の弁護士が引き継ぎ、事件を最後まで処理することになります。そうすると、成功報酬等が発生します。これについては、死亡前に承継元の弁護士がある程度の処理を進めており、潜在的には報酬が発生しているといえますが、これが現実化するのは、死亡後に承継先の弁護士が事件処理を完了したときです。そうすると、実質的には死亡前の弁護士が受け取り、そして、相続人が相続すべき報酬だったということがいえます。公平の観点から、成功報酬等を相続人に分配したいところですが、報酬分配規制(規程12条)の問題が生じます。

これについては、上記解説「弁護士職務基本規程」(28頁)によると「同一の事務所に所属していた死亡弁護士の相続人に、生前の事件に関する報酬を分配する場合」は適法であるという趣旨の解説があります。「同一の事務所」という記載がありますが、死亡弁護士の業務を引き継ぐケースであることは同じであり、弊害も考えにくいので、引き継ぎケースでも同様に解して差し支えないでしょう。

AIと非弁


AIの問題は、おそらくは弁護士法72条関係の話題では、今、一番ホットなトピックといえるでしょう。

現在、AIを利用して、契約書をチェックしたり、場合により法律問題に解答してくれるようなサービスが多数提供されています。問題の所在は、これらは、弁護士法72条にいう「鑑定」(書面のチェックも法律相談も鑑定に該当します)に該当し、弁護士ではない株式会社が、こういうサービスを提供することは、非弁行為に該当するのではないか、という点です。

また、弁護士が、AIを業務に利用する場合も、その提供事業者が弁護士法72条に違反するとなると、同条違反をする者を利用することを禁じた規程11条に違反する可能性もあります。

こういう問題はありますが、昨今のAI技術の進歩には目を見張るものがあり、手をこまねいて見ているわけにもいきません。そこで、日弁連では、近時ガイドラインにより、特にプライバシーの適切な扱いを呼びかけています。ただ、同ガイドラインには、基本的に弁護士法72条問題については触れられていません。

弁護士法72条の問題については、法務省の「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第 72 条との関係について(https://www.moj.go.jp/content/001400675.pdf)」が直接に触れています。

これによると、AI等を用いて法律関係のサービス(契約書チェックを例としています)を提供することは、場合により弁護士法72条に違反するとしています。

もっとも、弁護士法72条の適用については、非訟事件程度の軽度の紛争性を要求し、基本的に契約書審査AIは、同条に反しないとしています。

いわゆる「法律事件」に関する議論はかなり複雑なので深入りしませんが、ここで特筆するべきは、弁護士がAIを利用し、その出力結果を自分でチェックした上で顧客に提供する場合、AIが行う業務に制限はないと解していることです。
つまり、企業等向けのAIサービスは、弁護士法72条の規制を受けるが、弁護士だけに提供先を限定するAIサービスは弁護士法72条の規制を受けないと解釈しており、これはかなり大胆な解釈です。弁護士向けに提供を限定すれば、事業者は、弁護士法72条の規制を気にせずサービスを提供できることになります。

法務省としては、非弁護士・依頼者に直接に法律サービスを提供しない、あくまで提供先が弁護士であり、弁護士はそれをチェックして顧客に提供する、というルートを通っていれば、弁護士法72条違反の適用はない、と考えているようです。弁護士経由なら非弁護士がかなり高度な法律業務を担当できるので、かなり大胆な解釈です。

「外国法事務弁護士承認・指定申請等の手引(https://www.moj.go.jp/content/001450402.pdf)」における「本邦における労務提供に関する上申書(参考書式2)」は、この解釈を補強するものです。外国法事務弁護士という資格を取得するにあたって要求される実務経験に関し、資格取得前でも雇用主弁護士への法的サービスは提供しても適法であることを前提としています。

理論的に説明は難しいのですが、有資格者によるチェックがあれば不当な法律サービスが提供される弊害は防止できるだろう、という問題意識があると思われます。

以上を前提として弁護士の立場から見れば、弁護士向けに「だけ」提供しているAIサービスであれば、非弁は問題にならないと考えてよい、ということになります。法務省の見解を前提にしたものですが、日弁連も、上記の上申書の提出を受けて資格承認しているので、少なくとも
日弁連も反対するものではないと思います(すれば矛盾しているということになります)。

問題は、弁護士向けだけではなく、企業向けにも提供している場合です。形式的には、事業者は弁護士法72条違反になりかねず、弁護士法72条違反をしている事業者のサービスの利用は弁護士職務基本規程11条に違反する、という問題が生じます。

これはあまり議論されていない問題ですが、私としては、少なくとも事業者は弁護士との関係では上記法務省の見解によれば弁護士法72条に違反しないこと、職務基本規程11条の趣旨は弁護士の独立性を維持し、事件屋等との結びつきを防止することにあること、規程82条1項が弁護士の多様性、職務の個別性を尊重して、違反の有無を実質的に解釈すべきとしていること、以上から、実質的に規程11条には違反しないと考えています。

この点については、日弁連の弁護士法の解釈問題もあるので難しいですが、早期に問題ないという趣旨のガイドラインが策定されることに期待したいと思います。

まとめと非弁問題の勘所


いくつかケースを紹介しましたが、いずれも、未だ公式な見解が無いか、あっても弁護士会と法務省の見解に不一致があるという問題があります。私たち弁護士は、弁護士自治の下、弁護士会が採用するであろう見解にも留意しないといけませんので、他士業等との連携やAI等の活用における非弁提携問題は答えを出しにくい難しい問題です。このままでは、弁護士の業務拡大や改善を萎縮させかねません。

非弁や非弁提携の問題について、厳格に考えるのは大事ですが、一方で、自分とは異なる弁護士(業務)への不理解を正当化する懸念もあります。実際問題として、過去、広告と非弁提携の区別がなされない批判が横行したり、それどころか、昔の話ですが、判例データベースすら非弁のおそれがあるといわれたこともあります。

こういう態度は、イノベーションを阻害し、究極的には、市民の便益すら損なっているのではないか、他士業との業際問題にも悪影響があるのではないかと思います。普段から多様性の尊重を口にしつつ、身内の多様性は認めないのは、「内弁慶」とはいえないか。それで弁護士の使命(弁護士法1条)を果たせるのか、疑問なしとは言えません。

非弁と非弁提携問題は、ただの規制ではなくて、今後の弁護士の在り方の問題であり、弁護士とはなにか、どうあるべきか、という問いであると思います。


深澤 諭史(ふかざわ さとし)弁護士

63期・第二東京弁護士会。服部啓法律事務所。明治大法学部卒業、東京大法科大学院修了。IT関連事件、ネット上の表現トラブル、刑事弁護、弁護士法令問題などを中心に取り扱う。主な著書に『弁護士の護身術』『弁護士のための非弁対策Q&A』『Q&A弁護士業務広告の落とし穴』など。

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